第383話 カースド共和国編 パート5


 ⭐️ナレッジ視点になります。



 「とりあえず人界へ逃げた来たが・・・これからどうしよう」




 ナレッジは『時空の番人』の能力を使って、魔界から人界へ逃げてきたのである。ナレッジが逃げた場所は海に囲まれた小国のカースド共和国である。カースド共和国は大陸から少し離れた島に作られた国であり、漁業で生計を営んでいる平和な国であった。


 ナレッジが転移した場所はカースド共和国の教会の中に転移したのである。



 「あなた様は神様ですか」



 教会で祈りを捧げていた1人の女性がナレッジに声をかける。


 ナレッジが突然教会に姿を表したので、女性はナレッジを神だと思った。



 「・・・」



 ナレッジは女性を無視する。



 「私の子供を助けてくだい」



 女性はナレッジに懇願する。


 この女性の子供は生まれつき体調が弱く、治癒系の魔法でも改善されない病におかされていた。



 「神にでも頼んでおけ」



 人間は自分たちではどうにもならないことは、最後は神にお祈りして救いを求める。しかし、実際に神が裏天界から降りてきて人間を助けることはほとんどない。いくら祈っても神は人間には関心がないのである。



 「ずっと神様にお祈りを捧げています。でも息子は一向に良くなることはありません。貴方様は神様でないのなら、なぜ急に教会に現れたのですか?」



 誰もいない教会で1人で子供の回復を祈っていた女性の前に、突然現れたナレッジを神だと勘違いするのも仕方ないのである。



 「特に意味はない。それに俺は神ではない。ただの亜人だ」



 ナレッジの姿はお世辞にも神のような姿とは言えない。ナレッジの姿は、黒くて不気味な2本のツノに、先が尖った悪魔のような黒くて大きな翼。そして、赤く光る鋭い眼光、口元には鋭い二本の牙が生えている。


 しかし、藁をもすがる気持ちで祈り続ける女性には、そんなナレッジすら神様に目えたのである。



 「いえ、あなた様は神様に違いありません。お願いします。私の子供を助けてください」



 女性にとってナレッジの姿などどうでも良いのであった。女性は教会に突然現れたナレッジに救いを求めるのである。


 ナレッジは女性の傍に死んだように眠っている子供が目に止まった。



 「人間は脆弱だな。こんな症状も治すことができないのか?」



 人界の治癒魔法のレベルは魔界、天界に比べるとかなりレベルが低い。人界で直せない症状でも魔界、天界の治癒魔法を使えば簡単に治せることが多い。



 「助けてください。助けてください」



 女性は生まれてから病弱な子供のために、毎日教会でお祈りを捧げてきた。しかし、いくらお祈りを捧げても子供の症状は治ることはない。それどころかどんどん悪化して、もういつ死んでもおかしくないのである。



 「うるさい奴め。これくらい簡単に治るだろ」



 ナレッジは、子供に近寄って治癒魔法を使った。すると子供の顔色がみるみると血色の良い顔になって、死んだように閉じていた瞳を開いて女性に声をかける。



 「お母さん、お腹が空いたよ」


 「ロイ・・・体調は大丈夫なの?」


 「うん、全然問題ないよ。それよりもご飯が食べたいよ」


 

 ロイは笑顔で女性に返事をした。



 「ありがとうございます」



 女性はナレッジに頭を下げて何度も何度もお礼を言う」



 「うるさいやつめ。早くここから出ていけ!」



 ナレッジは、魔界から逃げきてゆっくりと休みたいのである。なので、ごちゃごちゃとうるさい女性を、教会から追い出したいだけである。



 「わかりました。後でまたお礼に伺います。この教会には誰もいないのでゆっくりしてください」



 ナレッジが転移した教会は、牧師などいない無人の教会であった。定期的に掃除などしているが、町の人は誰も近寄らないのである。



 「やっとうるさい人間がいなくなったかぁ・・・。これからどうすべきだ」



 ナレッジは考え込む。



 「そういえば、プロメーテウスは人界で王となって国を統治していたずだ。俺も人界で国を立ち上げるか・・・いや、だめだ。あまり目立つことをするとカァラァが俺を殺しに来るかもしれない。できるだけ目立たないようにしないと」



 再びナレッジは考え込んだ。



 「神様!これをお納めください」



 再び現れた女性がナレッジに食事を持ってきた。



 「これはなんだ!」


 「これは、近隣の海でとれた焼き魚です。この国は四方を海に囲まれた島なので新鮮な海の幸が豊富にあります。神様に少しでも感謝の気持ちを伝えたくて食料を持ってきました」




 ナレッジは、お腹を空かしていたので、喜んで食事を受け取った。



 「これは美味しいではないか!もっと食べさせろ」


 「わかりました。すぐに追加の食事を用意します」



 女性は教会から飛び出してすぐに追加の食事を運んだ。



 「これも上手いではないか!お前達は毎日こんな美味しい食事を食べているのか?」



 「海の幸は豊富なので、食事だけはおいしい物を食べさせていただいています。もしよろしければ、毎日食事を用意します」



 女性は子供を助けてくれたお礼をしたいのである。



 「そうしてくれ」



 ナレッジは、どのように生活するか迷っていたが、女性が食事を用意してくれると言ってホッとしたのである。



 「神様、この教会にお住みなるのですか?」


 「そうだな・・・しばらくはここを使わせてもらうぞ」



 ナレッジは住む場所がないので教会でしばらく住むことにした。



 「国王様に報告してよろしいでしょうか?」


 「好きにしろ」



 ナレッジは、いちいち人間の許可を取るつもりはない。住む場所がないから教会に住むことにしただけである



 女性はすぐに、カースド共和国の国王ゼラチンに報告をした。教会に神が出現したと!

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