第3話 天使との契約

          


 私はあまりの怖さのため、呼び出した悪魔達に帰ってもらった。


 私は魔王の子に転生したけど、前の世界では普通の女子高生。17歳の時事故で亡くなってこの世界に転生した。


 人間の記憶持つ女子高生が、悪魔と直に対面したら、そりゃー驚いて腰を抜かして、ビビるのも当然だと思うんですけど!と自分に言い聞かした。


 魔王の子に転生したが、魔界の魔族は、見た目はほぼ人間に変わりない。違いといえば、ツノや翼が生えてたりするくらいである。


 前世では異世界アニメ、小説は大好きだったから、多少は異世界に転生しても、暮らしていける自信はあった。いやむしろ異世界に転生する事に憧れていた。


 異世界に転生できると知った時、どんなに嬉しかったことか。ホントは可愛い貴族の女の子に転生して、異世界でチートスキルで無双するのが憧れだった。


 しかし、転生したのは貴族の可愛い女の子じゃなく、魔族の可愛い女の子だったが。でも、ずば抜けた身体能力、魔力量、そしていくらでも吸収する知識力。これはチートスキルを持って、転生したと感じてとても嬉しかった。


 だから私は、魔王となって魔界のみなからず、あらゆる世界に君臨する大魔王になると意気込んでいたはずなのに・・・


 まさかこんなに悪魔の姿が怖いとは、思いもよらなかった。あんなのと契約するなんて絶対に無理であった。

 

 これからどうしよう。お母さまになんて言って、言い訳をしたらいいのかな?困り果てた私は、契りの間で、頭を抱えて座り込んでしまった。


 その時突如として、目の前に1人の天使が、魔法陣からあらわれた。


 「悪魔との契約のやりとりを、全て見させてもらったよ。悪魔との契約を拒む魔王の子なんて、面白いお嬢さんだね!」



 1人の天使は私に向かって優しく声をかけてくれた。



 「お嬢さんは、なぜ悪魔との契約を拒んだのかな?私に教えてくれないか?」


 「天使様、私は魔王の子に生まれましたが、実は別の世界から転生者なのです。しかも人間です」



 私は自分の素性を素直に伝えた。



 「私がいた前の世界では、悪魔は人間に害をなす者であり怖い存在です。私はそんな悪魔とは契約なんて出来なかったのです」

 


 私は本当にそう思っていた。魔王の子に生まれたが、人間を滅ぼすなんて考えは全く浮かばなかった。人間と魔人が仲良くできる世界を作りたいと願っていた。

 

 実際魔界に住む魔人は、人界には不干渉の立場に立っている。何故だかわからないが、魔人が人界に行って人間を襲う事はないとお母さまが言っていた。


 「そういうことなのですね。それならば私の能力を、お嬢さんに授けようではないか!」


 「えっ。本当にいいのですか?私は魔族です。基本魔族に能力を与えられるのは悪魔だけと聞いております」


 「天使が魔族に能力を与えてはいけないというルールはないのです。しかし大きな問題点もあるのです。それを受け入れてもらえるのならば、私の能力を授けます」


 「大きな問題点?」



 私は不安の表情で答えた。



 「そう大きな問題点があるのです」



 天使様はそう告げると、問題点を語り始めた。



 「まず、天使の能力は本来魔族に与える能力ではないのです。与えたくても拒否反応が起きて、能力を授ける事ができません。しかし1つだけ魔族に、能力を与える方法があります。それは魔石を浄化させることです」



 魔人の心臓にあたるのが魔石と言われる物である。天使様が言うには、魔人の魔石は黒か紫色してるらしい。その魔石を浄化して、金色の魔石変える事が出来るらしい。



 「かまいません。浄化してくだい。」


 「しかし、完全に浄化するには、5年の歳月が必要となります。しかもその間は、魔力、身体能力はレベル1以下の状態になります。唯一知力だけが今の状態に保てる事が出来ます」



 5年・・・とても長い気がする。しかし、私にはもう選択権などないのだから、どんな苦難が待っていようとも、このチャンスを逃すわけにはいかないのである。



 「かまいません。浄化をお願いします」


 「強い覚悟があるみたいだね。それなら私の能力をお嬢さんに授けよう」



 私は天使様の前に跪き頭を下げた。天使様は、何やら呟きながら、私の頭にそっと手をそえた。


 そうすると、私の体からどんどん力が抜けていき、その場に立っているのが難しくらい力が抜けてしまった。



 「これで儀式は終了です。魔石は5年かけて徐々に浄化されていきます。浄化されるまでは、授けた能力を使うどころか、あらゆる魔法、身体能力強化は行う事はできません。しかし5年後魔石が浄化した時には、今まで以上の能力を手に入れる事ができます。それまでは、かなり不自由な生活になりますが、頑張ってください」


 「はい。わかりました」



 と声すら出せない状態なので、心の中で私は呟いた。


 天使様が私に力を与えて、帰ろうとした時、契りの間に大きな声が響いた。



「ちょっと待ったぁーーーーーーーー」


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