第19話 パースリの町パート1
⭐️ローガン視点になります。
「酷い目にあったなルーク。まさかババァが、俺を町から追い出すなんて、想像もしてなかったぜ」
ローガンが悪態をつく。
「これからどうしようか」
「そうだな、俺の町へ行こう。ローガンには、高い賃金で門兵をさせてもらっていたし、しばらくは、俺の実家で面倒をみてやるよ」
「それは助かる」
そういうと、2人はパースリの町へ向かった。パースリへの道のりは、昼間は魔獣もほとんど出ない安全なところだ。たまに、森から抜け出た魔獣があらわれるが、さほど強い魔獣は出てこない。
「もうすぐ町だな。日もだいぶ暮れてきたが、なんとか夜になる前には着きそうだな」
キャベッジの町から、パースリの町へは、馬だと3時間くらいだ。
2人は、町を追い出された時、馬で逃げてきたので、野宿はしなくてすみそうだ。
「夜になると魔獣が出るから、急ぐぞローガン」
「わかってるぜ」
魔獣の中には、夜になると活発的に森から出てきて、町周辺の動物を食べにくる魔獣もいる。この世界では、夜に出かけるのは危険である。
2人は無事に、日が暮れる前にはパースリの町の門へとたどり着くことができた。
「何かおかしいな」
門が閉まっていて門兵の姿が見当たらない。
「おい、誰かいないのか?」
ルークが大きな声で叫ぶ。しかし返事はない。
「ベアーウルフでも出たのか?それで門を閉めてるのか?」
「それはあり得るな。あの冒険者達は、ベアーウルフの群れを退治したと言ってたけど、また別のベアーウルフの群れが、来たのかもしれないな」
「それなら俺たちは、ここに居たらやばいかもしれないな。早く門を開けてもらって、町に入らないぜ」
2人は、門を激しく叩く。
「ドン、ドン」「ドン、ドン」
「門を開けてくれ」
すると門が開いた。
「なんだこいつらは・・・」
門が開くと、そこには、大勢のゴブリンがいた。ゴブリンに気づくとローガンは、真っ先に逃げ出した。
ゴブリンの群れが、ルークに襲いかかる。ルークは、腰にぶら下げていた剣を抜きゴブリンを切り払う。
ルークは門兵をする前は、パースリの町で衛兵をしていた。ローガンとは違い神技も身につけていて、パースリの町の中でもかなり実力者であった。その実力をかわれて、ローガンから破格の賃金で、キャベッジの町の門兵に引き抜かれたのであった。
「ローガンのやつビビって逃げたか。一人でこの数はヤバいな。俺もすきをみて逃げ出さないとな」
ゴブリン単体では、討伐難度Gランクのザコ魔獣だ。でも繁殖力が高く数が多いので苦労する。
ゴブリン1体を見たら近くに20体はいるだろう。
ローガンは神技を発動し身体強化をしている。
ローガンは、ゴブリンの攻撃をかわしつつ、的確にゴブリンを切りさばいている。もうまわりには、10体のゴブリンが横たわっている。
「こいつで終わりか。なんとかしのげたかな。でもゴブリンごときに門兵がやられたとは思えない。町の中には、どんな魔獣がいるのか・・・」
ルークは町へ入るのは危険だと思った。
「キャベッジの町には戻れないからトメイト村へ行くか」
その時パースリの町の門から、大きな魔獣が現れた。
「ジャイアントゴブリン…」
ジャイアントゴブリンとは、背丈が2メートル以上あるゴブリンである。ゴブリンは140センチくらいの小柄な魔獣だから、普通のゴブリンに比べるとはるかに大きく強大な力を持つ。その上スピードも速い。討伐難度はDランクである。
「ヤバい奴がいるな。逃げることも不可能だな・・・。この町も、こいつらにやられたのであろう」
そうルークは呟くと、ジャイアントゴブリンの振りかざした棍棒により、一撃で命を落としたのであった。
「くそ、くそ、くそ。なんで町にゴブリンがいる。何がおこっているだ」
ローガンは、ゴブリンを見ると恐怖のあまりルークをおいてすぐに逃げ出した。
ローガンは、無我夢中で逃げたので森の中へ逃げ込んでしまった。
「くそ、くそ、くそ。なんで俺が、こんな目に合わなければならないのだ。すべてあのムカつく冒険者のせいだ。あいつらさえ、俺の町に来なければ今ごろ町でのんびりと暮らせていたのに。あいつらだけは絶対に許さない。パースリの町はもうダメだ。かなり遠いが王都へ向かおう。王都には、神守協会の教皇様がいる。教皇様に頼んであの冒険者に報復してやろう。しかし、ここはどこなんだ。慌てて森の中へ来てしまったな。とりあえず森から出ないと危険だな」
ローガンは、森の中から逃げ出そうと必死に走ったのであった。
しかし、いくら走っても森から抜け出せない。やがて日が暮れて夜になってしまった。
「ヤバいな。真っ暗で何も見えない。とりあえずここで休むか」
ローガンは木を背にして座り込む。
「くそ、くそ、くそ。俺は町長の息子だぞ!貴族だぞ!なんでこんなところで野宿をしないといけないんだ。無事に森から抜け出せて、王都へたどり着いたら冒険者だけじゃくあのくそババァにも復讐してやる」
ローガンは1人森の中で叫んでいた。
「ガルルルー」「ガルルルー」
「なんだ。なんの声だ」
ローガンは、周りを見まわすと、無数の赤い点の光が見えた。
「なんだあれは」
無数の赤い点は、どんどんローガンに近づいてくる。無数の赤い点は、ブラックウルフの目であった。
「うわーーー」
何十体ものブラックウルフがローガンに襲いかかる。ローガンには争うすべがない。
数分後には、そこにはローガンの姿はない。あるのは食い散らかされて残った骨だけであった。
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