第365話 竜人国家ユグドラシル編 パート1
僕が魔界に戻るとナレッジの姿はどこにもなかった。
「あいつ・・・逃げたな」
僕はポツリと呟いた。
「カァラァ様、お疲れ様です。ルシスお嬢様の難病を治す方法は見つかったのでしょうか?」
僕を出迎えてくれたのは、僕専属の護衛隊の1人レリウーリアである。レリウーリアは長い黒髪の美しい女性だ。前髪が長くて大きく美しい黒い瞳を隠しているが、彼女の瞳を見たら恋に落ちない者などいない。僕はいまだに彼女の瞳を見たことはない。
「難病を治す手がかりは見つかったが、それよりもナレッジがルシスお姉ちゃんを人界へ逃さずに、魔獣の森へお姉ちゃんを転移させて、魔獣に殺させたと神に報告していたんだ」
「ナレッジのやりそうなことですね。あいつはカイザー様が冥界へ旅立たれてから、調子に乗り出したのです」
「そうだね。あいつを始末しようと思ったけど、『時空の番人』の能力を使って逃げたみたいだよ」
「追い出せただけでもよかったのかもしれません」
「だめだよ。もし、本当にお姉ちゃんが魔獣に殺されていたらその責任とってもらわないと!」
「そうですね。でも、ルシスお嬢様なら生きていると私は思います。私はルシスお嬢様が2歳の頃拝見する機会がありましたが、ルシスお嬢様の発するオーラは2歳児とは思えないほど強大でした。ルシスお嬢様こそが大魔王になる器の人物だ一目見てわかりました。そんなルシスお嬢様が、ナレッジの策略にはまって死ぬとは思えません」
「僕もそう思っているよ。でも、もしかしたらと考えてしまうんだよ」
僕はしょんぼりとする。
「カァラァ様もルシスお嬢様のことになると心許なくなるのですね」
レリウーリアはそっとカァラァを抱きしめる。
「だって、僕の大好きお姉ちゃんだよ。心配になるのは当然だよ!」
「そうですね。でも大丈夫ですよ。ルシスお嬢様は必ず生きていますよ」
「うん。早くお姉ちゃんに会いたいよ・・・」
僕はレリウーリアの腕の中で、声を押し殺して涙を流した。
⭐️リプロ視点に戻ります。
僕はリヴァイアサンに連れらて上空を飛行している。竜人族が住むユグドラシルは、世界樹と言われる大きな木からできている浮遊する島である。大きな雲に覆われて、地上からユグドラシルを見つけることは不可能であり、幻の島とも言われている。
竜人族は人界の頂点に立つ種族であり、自主的に人界の警察の役割を担っているのである。リヴァイアサンは地底国家の平和を守る為に、地底国家を拠点として生活をしている。また、エルフとドワーフの争いを防ぐためにアトラス山脈でドラゴン3姉妹のステン・エウリ・メデューが目を光らせている。
他にも各地に竜人族が派遣されていて、種族間の争いを防いているのである。しかし、同族同士の争いには関与はしない方針である。
「あの大きな雲の中にユグドラシルがありますわ」
僕の前方には大きな山のような雲が空一面を覆っている。その雲の中にユグドラシルが存在するらしい。
「この大きな雲は天空雲と呼ばれてます。この雲を無事に抜けることができた者のみが、天空の城と呼ばれるユグドラシルに行く事が許されるのです」
リヴァイアサンは雲の中に突入した。雲の中は激しい暴風が起こり、稲妻がほとばしっている。滝のように稲妻が上空から襲ってくるが、リヴァイアサンは、稲妻の動きを知っているかのように、当たる直前で避けるのであった。
「すごく綺麗ですぅ」
滝のように無数の稲妻が、上空から襲ってくる光景を見て、フェニは嬉しそうに眺めている。
「全然怖くはありません」
レオは体を震わせながら、リヴァイアサンに必死にしがみつく。稲妻を怖がっている姿をリヴァイアサンに見せたくないので強がっているが、ブルブル震える体でリヴァイアサンに捕まっているので、リヴァイアサンを欺くことはできないのである。
「レオさん、もう少しで着きますので頑張ってくださいね」
レオのビビりように心配して、リヴァイアサンは優しく声をかける。
「全然怖くないので平気です。なんならずっとここに居てもいいくらいです」
と無駄な虚勢をはるレオであった。
滝のように降り注ぐ稲妻を抜けると、一面真っ青な綺麗な青空が見えた。そして、その青空の中心には大きな木がそびえ立っているのである。
「山のように大きな木があるのですぅーー」
フェニは大声で叫んだ。
「これが世界樹だよね」
「そうですわ。この世界樹が私たちの住むユグドラシルを形成しているのです。見た目は山のような木ですが、島に上陸するととても賑やかな町があります」
リヴァイアサンは、世界樹の根元の大きな大地に着地した。
「着きましたわ。前方に見える世界樹の木の元にある大きな門の中に、セキランの町があるわ」
僕たちの前方には僕の背丈の10倍もある大きな門がある。この大きな門を抜けるとユグドラシルの町セキランがある。
「ちょっと待ってくてくださいね」
リヴァイアサンは僕たちを地面に下ろすと、そのまま門に体当たりをした。
「グオォーーーーーン」
激しい鈍い音が鳴り響いて、大きな門が開いた。
「どうぞ、中へ入ってください」
リヴァイアサンは人間の姿に戻って手招きをした。
この大きな門は手動式であり、ドラゴンのタックルによって開くのであった。
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