第364話 魔石国家ケルト王国編 パート34

 

 「あのまま帰してもよかったのか!」



 オーディンが大声を張り上げる。



 「だからあなたは3流の王なのよ。あの子のただならぬオーラを感じることができなかったの」


 「何も感じなかったぞ」


 「はぁー」


 

 アプロスはため息を吐いた。



 「あなたがあの子のお姉ちゃんが死んだと言った時に本当に何も感じなかったの?」


 「全く何も感じなかったぞ」



 オーディンは平然と言う。



 「あの子は殺気を抑えていたけど、私は背筋が凍るほどの恐ろしさを感じたわ」


 「私もよ」

 

 「私もよ」



 3神嬢は皆カァラァの殺気に怯えるほどの恐怖を感じていたのである。



 「あの子が本気で私たちを襲って来たら3人がかりでも難しいと思ったわ」



 パイスが淡々と答えた。



 「そうね。魔王の子供の実力は相当だと思うわ」


 「実は、私がプロメーテウスを捕らえに人界に行った時、不気味なオーラを発する子を見たのよ」



 アプロスが、真剣な目で話し出した。



 「魔人が調査に来てたのね・・・」


 「そうよ。しかもさっき表天界に来た少年にそっくりだったわ。ただの魔人ではないと思ったけど、彼も魔王の子供の1人だったのよ」


 「トラブルは起きなかったのね」


 「ええ、とても優しい子だったので、プロメーテウスの独断の行動と判断してくれたみたいで、私達に何も言ってこなかったわ」


 「それはよかっわた」



 オリーブはホッとした。



 「たかが、魔王の子供ごときにお前らはビビっているのか?」



 オーディンは偉そうに言う。



 「あなたこそその能天気な頭をなんとかして欲しいわ。本当は表天界を守護してくれるのは、ボル王子かベストラ王女のはずだったのよ。ボル王子は裏天界に修行に行くと言って帰ってこなくなったし、ベストラ王女は人界の民と恋に落ちて、神人の地位を捨ててしまったわ。そして余ったあなたが表天界の神王になった経緯を忘れたのかしら?」



 嫌味っぽくパイスが言った。



 「ボル兄もベストラ姉も神王の器ではなかったと言うことだ。俺こそが表天界の王に相応しい男なのだ」



 オーディンは偉そうに笑いながら言った。



 「先が思いやられるわ・・・早くボル様が戻って来てくれないかしら」



 アプロスがため息をついきながら言った。



 「そうね。今回はたまたま食卓にあの子が来たからよかったけど、もし、私たちがいなければ大ごとになっていたわ」


 「あの子には転移の魔石具を渡したし、直接オーディンと会うこともないわ」



 転移の魔石具を渡したのは、カァラァとの窓口を3神嬢で確保したかったのである。オーディンが絡むとややこしくなるのである。



 「あの子ためにもあの子のお姉ちゃんの情報を探らないとね」


 「もう死んでいるだろうよ」



 オーディンはそっけなく言った。



 「確かにウーラノス様は、お酒の席でそう言っていたわ。でも、あの子はそれを信じないはずよ。約束通り少女を浄化した天使様が誰なのか探らないとね」


 「そうね。今度ウーラノス様主催の合コンパーティがあるわ。乗り気じゃなかってけど参加してみるわ」


 「それなら俺も参加予定だぜ。可愛い天使ちゃんに会えることを楽しみにしてるぜ」



 オーディンが気色悪い笑みを浮かべながら言った。




 ⭐️場面は少しだけ遡り魔界になります。



 「それは本当ですか!」



 ナレッジは驚きのあまり腰を抜かしていた。


 ナレッジの『時空の番人』の能力の一つ『どこでも通話』がある。ナレッジは時空を歪めてどの世界の誰とでも連絡が取れるのである。



 「ああ、魔人のガキが来たらお前の悪事を全部バラしてやれと指示を出しておいたわ」


 「なぜ、そんなことをしたのですか?」



 ナレッジはアタフタしている。



 「今度、表天界で合コンをするのだよ。その時に面白いネタが欲しかったので利用させてもらったぜ」



 ニタニタにやけながらウーラノスは言った。



 「合コンのネタ・・・俺はそんなことのために利用されたのか」



 ナレッジはうなだれる。



 「そんなこととは何事だ!!!表天界には3神嬢というとびきり美人の神人がいるのだぞ。3神嬢にも声をかけているので、俺はワクワクのドキドキのウッハウッハなのだ」



 ウーラノスは激怒した。



 「それに、俺は裏天界の王だぞ!魔界の雑魚の相手をしてやっているだけでもありがたいと思え」


 「俺は雑魚などではありません。魔界では魔界参謀長官という高い地位についています」


 「はぁー。そんな肩書きはなんの意味を持たないぞ。俺と対等に話をしたいならせめて魔王になってからにしろ」


 「私では魔王になることは不可能です。なので、私が可愛がっている魔王の血縁の者を魔王にする予定になっています。だから、協力をお願いしたのです」


 「そうだったな。しかし、俺はお前のことよりも次の合コンのが大事なのだ。悪いが、お前には俺の合コンのネタの犠牲になってもうぜ。事実を知った魔王の子がお前をどうするのか楽しみだ。どうなったか俺に教えろよ」



 嬉しそうにウーラノスは言った。



 「ふざけるな!」



 ナレッジは時空の回線を切った。



 「魔界にいたらカァラァに殺されてしまう・・・仕方がない人界へ逃げるか」



 ナレッジは、『時空の番人』の能力を使って人界へ逃げたのであった。






 


 

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