第229話 ホロスコープ星国 パート6
★フェニ視点に戻ります。
「やっと森を抜けたね。フレキさん」
「そうですね。これからどこへ向かうのでしょうか?」
フレキが優しい笑顔で聞いてきた。
「道なりに進んでいくと町があると思いますので、町へ向かおうと思います」
「ちょっとまってくださいフェニちゃん。森の方へ向かう魔獣の群れがいます」
フレキは鋭い目つきになっている。
「どこですか?」
私も鋭い目つきなる。
「南西の辺りから、たくさんの魔獣が移動しています。すぐに向かいましょう」
私達は急いで南西の方へ向かった。
南西の方から、20体くらいの白い羊の魔獣と黒い羊の魔獣が南の森へ向かっているのを発見した。
フレキはウルフキングの姿になり私を背に乗せて、羊の魔獣の群れの前に駆け出して行った。
「あなたち止まりなさい」
フレキは鋭い視線で羊の魔獣を睨みつける。
「止まれと言われて、止まるわけないだろう」
羊の魔獣はフレキの言葉を無視して、フレキの側を駆け抜けていった。
フレキは、大きくジャンプをして、上空から『ホワイトブレス』を放った。
『ホワイトブレス』の白い突風が、地面に大きな穴を開けた。
羊の魔獣の群れは、その大きな穴の中に落ちていった。
「何をするんだ」
羊の魔獣Aが言った。
「言うこと聞かないからです」
「お前は、ウルフキングじゃないのか?」
羊の魔獣Bが言った。
「そうです」
「ウルフキングはベアーウルフじゃないのか?」
羊の魔獣Cが言った。
「違います」
「じゃー何者なのだ」
羊の魔獣Dが言った。
「何者と言われても・・・」
フレキは困惑する。
「なぜ、ウルフの森から出てきた」
羊の魔獣Eが言った。
「旅に出る事にしたのです」
「本当か?」
羊の魔獣Fが言った。
「本当です」
「いや・・・違うな。キマイラ様が怖くてウルフの森から逃げてきたのだな」
羊の魔獣Gが言った。
「違います」
フレキはキッパリと言った。
「嘘をつくな」
羊の魔獣Hが言った。
「嘘ではありません」
「おい!ウルフキング。俺たちにこんなことをしたら、どえらい事になるぞ」
羊の魔獣Iが言った。
「あなた方は、キマイラさんのお友達ですか?」
フレキは問いかける。
「俺たちはキマイラ様のお友達だぞ。キマイラ様にビビって森から逃げてきた奴が、俺たちに刃向かったら、キマイラ様がお前達をケチョンケチョンにしてしまうぞ」
羊の魔獣Jが言った。
私は、羊の魔獣が何を言っているのか理解できないが、何やら揉めているのだと思っていた。
「キマイラさんは、私とお友達になったのであなた方も私の友達と言う事ですね」
フレキは笑顔で言った。
「友達じゃなく、手下になったの間違いだろ」
羊の魔獣Kが言った。
「あなた方は、私ときちんとお話ができないみたいですね。それなら、少しお仕置きが必要です」
フレキから笑顔が消えて、また鋭い目つきに変わった。
「待て、少し落ち着いて話をしよう」
羊の魔獣Lが言った。
「わかりました」
フレキは少しだけ猶予を与えた。
「こんな大きな穴ぼこを作れる魔獣だ。このままだとヤバくないか?」
「やばいぞ」
「あいつを怒らせるな」
「お仕置きなんてごめんだぜ」
その他もろもろの羊の魔獣が騒ぎ出す。
「ごめんなさーーーい」
羊の魔獣Mが言った。
「あなた方は、何しにウルフの森へ行くのですか?」
フレキが優しく問いかける。
「お散歩です」
羊の魔獣Nが言った。
「本当ですか?」
フレキが威嚇して言った。
「嘘です。美味しい果物を食べるためです」
羊の魔獣Oが素直に言った。
「ウルフの森には果物はありませんよ」
「嘘だー」
「嘘だーー」
「この嘘つきウルフ」
その他もろもろの羊の魔獣が言った。
「誰がそんなこと言ったのですか?」
フレキは優しく問いかける。
「ヤギの魔獣です」
羊の魔獣Rが言った。
「ヤギの魔獣?そんな魔獣いたかしら?」
「俺たちも初めて見た魔獣でーーす」
羊の魔獣Sが言った。
「そんな見ず知らずの魔獣を信じてもいいのですか?」
フレキが問いかける。
「果物があると聞けば、そこに訪れるのが俺たち羊の魔獣だぜ」
羊の魔獣Tが言った。
「知らない人の話を鵜呑みにしてはいけません」
「これで準備がととのたぜ。俺たち全員と喋ると、俺たちは天下無敵の大羊王になるのだぜ」
羊の魔獣たちが、白と黒の毛玉になり毛玉同士が合体して、黒と白のマダラ模様の大きな羊に変身した。
「ドハハハハハハ。俺が本気を出せばこんなに大きくなれるのだぜ。俺を穴ぼこに落としている間に倒していればいいものを・・・俺と長話をしたことを後悔させてやるぜ」
大羊王は10mくらいの巨大な羊の魔獣になった。フレキが作った穴ぼこの深さは5mくらいなので、大羊王は、体の半分は穴ぼこから出ている。そして、穴ぼこの直径と同じくらいの大きさになった大羊王は、穴ぼこから出ようとした。
「エーーイ」
「ヤーー」
「ウーーー」
「ヨイショ」
「ドッコイしょ」
大羊王は、穴ぼこから出ようとするが、穴ぼこと同じサイズになったので全く身動きが取れない。
「ヨイサーーー」
「ドッコイさー」
「ウントコサ」
「グーーーん」
「ドイヤー」
掛け声を変えるが、一向に穴ぼこから出れそうにない。
「ドーーン」
「ゴボーーん」
「どやさ」
「ギュイーーん」
「ドボン」
どんなに足掻いても穴ぼこから出れない。
「ペチペチ」
「ポンポン」
「トントン」
「ズシズシ」
「シクシク」
大羊王は穴ぼこを叩いて潰そうとしたが、穴ぼこにジャストフットして全く効果がない。そして最後には泣き出したのであった。
「フレキさん、この様子だと羊ちゃんは悪さはできないだろうから、このまま放置して町へ行こうよ」
私は言った。
「そうね。しばらくはこの穴ぼこで反省してもらいましょう」
フレキも私の意見に同意した。
「待ってくれーー」
大羊王の中の羊の魔獣Aが言った。
「・・・」
フレキ達は、大羊王の言葉を無視して町へ向かった。
大羊王が、元に戻るにはまた全員と喋らないといけない。大羊王は、会話をしてくれる魔獣が現れるのをずっと待ち続けるのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます