第283話 ホロスコープ星国 パート60
「レオ様・・・」
兵士たちは、急に食堂にレオが現れて騒然とする。
「食事中にすまないが、俺の話を聞いてくれ」
レオは、優しい瞳で兵士たちを見る。
「なんだか、いつものレオ様と雰囲気が違う気がしないか・・・」
兵士たちは、いつも高圧的な態度をとるレオが、優しい瞳で、優しく声をかけてくるので戸惑っている。
「大事な話だ。食事をしながらでいいので聞いてくれ」
いつもなら、『星の使徒』が大事な話をするときは、兵士たちは直立不動で聞き、そして、声を発することさえ許されない。なのに、食事をしながら、聞いても構わないと言われて、兵士たちは、食事を止めて真剣な眼差しでレオの声に耳を傾ける。兵士たちは、いつもと違うレオの雰囲気に、重大な何かがあると感じたのであった。
「俺たちは、ジェミニを倒しにきた。これまで、ジェミ二が築いたホロスコープ星国の時代に終止符を打って、フェニ王による新たな歴史を築き上げることにした」
「・・・」
兵士たちは、突然の出来事に言葉が出ない。
「パン屋さん・・・」
私の口をヴァンピーが塞いだ。
「フェニちゃん、静かにしてなさい」
「お前達は、今の生活に満足しているか?ジェミニに本当に忠誠を尽くしているか?フェニ王による新しい世界を見たいとは思わないのか?」
レオは兵士たちに問いかける。
「奴隷のような生活は嫌だ」
「なぜ『星の使徒』だけが優遇されるのだ・・・俺たちは家畜じゃない」
「ジェミニなんて、いなくなればいいのだ」
兵士たちは不満を言う。
「フェニ王?」
「フェニ王とは誰のことだ?」
そして、フェニ王とは誰のことなのか、問いかける。
「お前達の不満は理解している。しかし、お前達は弱い。虫けらのように弱い。そんな弱いお前達に希望などないのだ」
「・・・」
兵士たちは呆然とした。優しいレオから、いつものレオに戻ったのであった。そして、不満を言ったことを後悔した。兵士たちは、レオに騙されて本心を言わされたと思ったのであった。
「そして、俺も弱い。そんな弱い俺たちを導いてくれるのが、フェニ王なのだ」
レオは私を指さした。
私は、ヴァンピーに口を塞がれて、腕を掴まれた状態であった。しかし、ヴァンピーは、話の流れを察知して、私を前に突き出したのであった。
「フェニ王、兵士たちに声をかけてください」
レオは私に跪いた。
「王都には、おいしいパン屋さんがあります。私は今すぐにでも、おいしいパンを食べたいのですぅ〜」
『キュルルルーー』
私は、今思っていることを発言した。そして、私のお腹が鳴ったのであった。
「女神様ではないか・・・」
「女神様は、自分がお腹をすかしているのに、俺たちにパンを差し出してくれたのか!!」
「自分もおいしいパンを食べたいのに、先に俺たちにパンを譲ってくれたのか!」
「なんて慈悲深い方なのだ」
兵士たちは、自分自身の空腹よりも、兵士たちの空腹を優先した、私の慈悲ある行動に感動している。
「フェニ王は、とても強い力を持っている。なのに、自分よりも弱者を優先する慈悲に満ちた心を持っている方である。お前達はどちらの王を求めるのか?強者のみが闊歩するジェミニの統治か?弱者を優先するフェニ王の統治か?お前達が選ぶと良い」
レオは、兵士たちに向かった問いかけた。
「もちろんフェニ王です」
「フェニ王です」
全ての兵士が私を選んだのであった。
「俺たちは今から『星の使徒』の食堂へ行く。そして、ジェミニに王の座を退くように要求する。お前達は、安全のために一旦シリウス城から避難してくれ」
レオは、希望ある眼差しで兵士たちを見た。
「わかりました」
兵士たちは、跪いて私に頭を下げた。
「『星の使徒』の食堂には、おいしいパンがあるのかな?」
私の優先順位1位はパンである。
「あるわよ。ジェミニは料理人に、特製のおいしいパンを作らせているのよ」
ヴァンピーが誰にも聞こえないように、私の耳元で囁いた。もちろん嘘の情報である。
『デヘヘヘへ』
私は、ヴァンピーの嘘の情報を信じて、にやけた顔が、ダルンダルンになっているのであった。
「『星の使徒』の食堂へ出発!!!」
私の元気のいい声が食堂に響いた。
そして、私とレオ、キャンサー、ヴァンピーの4人は、ジェミニのいる『星の使徒』専用の食堂へ向かったのであった。
『バタン』
『星の使徒』専用の豪華な食堂の扉が開けた。
「アリエル!遅いぞ。いつまで料理人を探すのに時間がかかっているのだ!」
ジェミニは空腹でイライラしている。
「・・・レオ、それにキャンサー・・・お前達戻って来たのか」
ジェミニは、食堂に入ってきたのは、アリエルではなくレオとキャンサーだと気づいた。
「ヴァンピーもいるのか・・・その子供は誰だ!」
ジェミニは私の存在に気付いた。
「その子供・・・どこかで見たような気がするな・・・手配書の子供か!」
「そうです」
レオが答えた。
「よくやったレオ。手配書の子供を捕まえたのだな」
ジェミニは、レオ達が手配書の子供捕まえたので、食堂に顔を出したと思ったのである。
「ウルフキングは、倒したのか?」
ジェミニは、レオ達が子供を捕まえたので、ウルフキングを倒したと推測した。
「ジェミニ、何か勘違いをしているみたいんだな」
レオはジェミニを睨みつける。
「俺を呼び捨てするとはいい度胸だな。子供を捕まえたことで、自分が偉くなったと勘違いしているのか?」
ジェミニは、呼び捨てにされて激怒している。
「ジェミニ、お前こそ、まだ自分が王だと勘違いしているみたいだな」
「何を言っている。俺はこの国の王だ」
大声でジェミニは叫ぶ。
「お前の時代は終わったのだ。これからは、この国はフェニ王が統治するのだ」
レオは私を指さした。
私を見たジェミニは、怒りに満ちていた。
「ふざけるなーーー」
ジェミニの怒りの雄叫びが、食堂内に響き渡るのであった。
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