第116話
枢機卿の重々しい言葉に、広間にいた人々が大きく騒めく。
「エンディメン枢機卿、それは真か!?」
慌てたのは宰相。王族の方々も、血の気が引いているように青ざめている。前を向いてたはずのイザーク兄様とヘリオルド兄様まで、膝をついたまま、驚いた顔で振り向いてる。
「はっ……聖女様、あちらを浄化されるので」
「はい。枢機卿様でも、お出来になるでしょうけど……力を見せろ、ということなので」
「いやいや、私でも、ある程度環境を整えないと難しいです」
「そういうものですか?」
小首を傾げてそう答える。私はジーナ姉様の呪いしか知らないから、よくわからないけど。そもそも浄化のスキルを意識して使ったこともなかったわけで、上手くいくかわからない。でも、不思議と、なんか上手くいくとしか、思えないんだよね。
私は正面を向き、国王様を見る。国王様本人のほうは、落ち着いて見える。
「国王様、お傍に行かせていただいても」
「構わぬ、近くに」
「王妃様っ」
答えたのは国王様ではなく、隣に座っていた王妃様。それに苦言を呈そうとしたのは、重臣たちの集団の中にいた一人の偉そうなおじさん。ちょっと恰幅がいい……というか、見事なお腹だわな……そして、この人、地図の中の薄っすら赤い人でした。
「黙りなさい。カリス公爵」
「しかしっ」
「貴方方が言ったのでしょう。聖女殿の実力を確認しろと。まさに、いい機会ではありませんか。エンディメン枢機卿もいらっしゃるのです。彼らの立ち合いの元に確認が出来るのですから。それに、何かがあったとしても、リンドベル辺境伯、其方、責任をとるのであろう?」
うわー、メンドクサイこと言い出したのはコイツだったのか。
ついつい冷ややかな目で、おデブさんに目を向ける。そして、王妃様の言葉に内心ビビる。兄様たちに責任求めるとか、この人も言うなぁ。不安になって、兄様たちに目を向けるけど、二人とも自信満々に笑みを浮かべる。
「当然でございます。しかし、万に一つもミーシャが失敗するとは思えません。彼女は、アルム神様に愛された聖女ですから」
ヘリオルド兄様!?
そう言い切ってくれるのは嬉しいけど、余計なプレッシャーがかかるんですけど!
しかし、兄様の言葉に満足げに頷いたのは王妃様。他の人たちも「おおお!」とか言って期待の視線に変わってる。そんな中、おデブさんは忌々しそうに、こっちを見たけれど、鼻を鳴らして引き下がった。
私は感謝の意を込めて王妃様に向けて頭を下げると、ゆっくりと前に出る。そして私の視野に端に入ったのは。
おデブさんの口元が上がって、一瞬、嗤ったように見えた。
……こいつ、怪しすぎるでしょ。
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