第17章 おばちゃん、婚約者候補を選ぶはめになる
第177話
アリス母様のお言葉に従い、私が王都から掻っ攫って来ましたよ。イザークお兄様。
仕事中っぽかったけど、『アリス母様がお呼びです』とお手紙を出したら、すぐに返事が来て、王都の屋敷に迎えに行きましたよ。よく抜け出してこれたな、って思ったら、騎士団長のエッケルス様にアリス母様の名前を出したら、一も二もなく、行ってこいと言われたそうな。
……アリス母様、どんだけ恐れられてるのよ。
領都に戻ると、家族総出で出迎えられるし、サロンへと連れられて行く様は、完全に罪人扱い。いつもより小さく見える兄様の背中を見ると、ちょっとばかり、気の毒にもなる。
サロンでは、イザーク兄様だけが立たされて、皆からの視線が集中する。
「申し訳ございませんっ」
頭を思い切り下げている姿は、いつものお兄様らしくなくて、つい、ため息をついたら、お兄様の肩がピクリと震えた。
「イザーク、なんで呼ばれているのか、わかっているようね」
「……ミーシャへの手紙、でしょうか」
「そうね……まずは、あなたの釈明を聞きましょうか」
アリスお母様、怖いですよ。ビョービョー冷たい風が吹いてそうな感じです。
「……はっ」
返事をしたものの、すぐに言葉が出ないイザーク兄様。何を悩んでいるのだろうか。
「お前の婚姻については、お前の自由にしろ。それは、以前から言ってはいたな」
先に話し始めたのは、ヘリオルド兄様。ここは現役の辺境伯であるヘリオルド兄様が、話を進める様だ。
「近衛騎士の仕事に集中したい、というお前の意思もあったからこそ、こちらから婚約者を探すようなこともしなかった。そうだな」
「はい。感謝しております」
「しかし、自由にしてもいいとはいえ、状況を考えるべきではないか」
「……」
イザーク兄様は両手の拳を強く握りしめながらも、ヘリオルド兄様の言葉に、返す言葉もない様子。
「イザーク」
今度はエドワルドお父様の重い声が、イザーク兄様に答えを促す。
そして、イザーク兄様は目を閉じながら、声を絞り出すように呟いた。
「……ミーシャを第三王子、リシャール様の婚約者に、という話が王城内で噂されるようになりました」
「そんなのは、前からあった話であろう」
「半分以上が、冗談のような話であったではないか。リシャール様、ご本人からも、否定されてたはずだが」
そりゃぁね。大事にしてた側近の一人が、あんなことになっちゃった原因の私となんて、普通に考えても会いたくもないんじゃないかね? 特に、あのくらいの年代だったら。
「……そのリシャール様が、ヴィクトル様にご相談されたのです。本気でミーシャを婚約者に出来ないか、と」
まさか、そんな話になるとは、私も思いもしなかったから、思わず大口をあけてビックリしてしまった。
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