第176話
曰く。
偽聖女様(めんどくさいから、これで統一)、王都の学園で相変わらず第三王子に絡みまくっているとか。まぁ、そこはどっちも頑張れ、としか言えないけど。
平民出身とはいえ、帝国の侯爵令嬢ということであれば、外交的にも悪くない選択肢ではあるけれど……偽聖女様、かなり性格悪いらしい。元平民なのに、平民へのあたりが強いとか。かといって、貴族としてのマナーができているかといえば、それも微妙だそうです。
それはそれとして、その余波で、第三王子の婚約者候補が軒並み、辞退されてしまっているらしい。そうなったら、第三王子側の選択肢がどんどん減っていくわけで、『残り物に福がある』はずが、ハズレしか残らなかった、なんていうオチがつきそうだ。
曰く。
その辞退した婚約者候補の中に、カリス公爵の娘、エミリア様も含まれているそうだ。
元々、姉が第二王子の婚約者になってるんだから、妹は別にいいじゃん、ってなるはずだけど、けっこうしぶとく候補として残ってたらしい。
それだけ権力があるってことなんだろうけれど、カリス公爵、偽聖女様の方に力をいれてるみたい。エミリア様も、今では、というか今でも、というか、第三王子よりもイザーク兄様押しなんだとか。そういえば、この前の王城でも、なんか凄かったよなぁ。私も遠い目になるよ。
で、少し前にカリス公爵家から、イザーク兄様への打診が来ていたらしいんだけど……兄様の方が近衛騎士として全うしたいので、とか、カッコいいこと言って断っていたらしい。一応、第二王子からの援護射撃があって、公爵相手になんとかなっているらしいけど。
曰く。
それにつられるように、その辞退した令嬢たちの釣書やら姿絵やらが、山ほど届いているらしい。その山ほどって、どんだけ候補がいたんだよって言いたくもなるんだけどね。
なんで、こんなに来るか、というと、やっぱり辺境伯としてのリンドベル家の肩書しかり、第二王子のお気に入りしかり、騎士としての実力しかり。
そして……私、聖女の庇護者というのも大いに惹かれる条件だと言うのだ。
人気者は辛いねぇ……イザーク兄様。
大多数は政治的な思惑なんだろうけれど、中には本当に兄様のことを好きなご令嬢だっているだろうに。
「だからって、安易に私と婚約とか……ないないない」
「あら、ミーシャ、でも貴族だったら、貴女ぐらいの年齢ならすでに婚約してらっしゃる方はいるのよ?」
「あー、そうかもしれませんけど、私、貴族じゃありませんし」
「『聖女』様でしたら、王族と同じくらいと思ってもよろしいのでは?」
「何言ってるんですか!? ヘリオルド兄様!」
アルム様の言葉があったから、ちょびっと、そう、ほんのちょびっと、イザーク兄様のこと、思わないでもなかったけど!
そ、そりゃぁ、イケメンだし、優しいし、強いし……う、うん?
「まぁ、一度、本人を呼び出して確認したほうが早いかもしれませんわね」
「呼び出す?」
ニッコリ笑ったアリス母様。
「よろしくね、ミーシャ」
あ、はい。有無を言わせぬその笑みに、反論は聞かない、と無言で押し切られたのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます