第273話
私は発掘作業しながらも、横に表示してた地図情報で周囲の悪意探知で敵情報を確認。
「ん、一応、魔物はもういないっぽい」
同様に、半径百メートル以内に他の冒険者が入りこんでいないかも確認してから、結界の範囲を広げる。そうすれば、双子の作業が捗るし、私も周囲を気にせず集中できるというものだ。
「じゃ、魔石拾うかな」
「しっかし、すごい量。これ、他の魔物気にしないで拾えるんだもの、楽だよなぁ」
基本的に、ダンジョンで斃された魔物たちは、魔石だけを残して消滅していくのだそうだ。さっき、結界の上に乗ってた熊の魔物も、しばらくして消えてしまったし、その魔石は今は地面に落ちている。随分と大きな赤黒い魔石だ。
この魔石というのも、魔力用のポーションに使える物と、そうでないものがある。武器に嵌め込んで、魔法を発動させるような使い方をする物もあるのだとか。たぶん、ニコラス兄様が使っているワンドの付け根についている緑の魔石なんかは、そういった類のものだろう。
残念ながら、この前買ってもらった私のワンドには、何もついていない。超シンプル。なぜならば。下手に魔石がついているのを使うと過剰攻撃になる、と、精霊王様から言われたから。まぁ、こうして結界がある限り、使う必要はなさそうではある。
「あ、これ、黒魔狼の牙じゃない。それも、かなり大きいし。ラッキー!」
パメラ姉様の喜びの声に目を向けると、姉様の手よりも大きそうな黒い牙が落ちている。
「それって、何に使うの?」
「んとねぇ、基本は武器に加工されることが多いけど、これだけの大きさになると、錬金術の素材として使われるかもね」
「へぇ! 錬金術かぁ」
その言葉に、『等価交換』を叫んでいたアニメを思い出す。私のスキルにはないけれど、誰かに教えて貰ったら、スキルになったりするんだろうか、などと考えてみたり。
『美佐江、あっちの崖の下に、いいのがありそうだわ』
「いいの?」
双子たちが魔石を拾いまくっている間に現れたのは、ミニチュアサイズの土の精霊王様。こうして鉱石を探すのにはバッチリな組み合わせ。彼女の言葉に従って崖の下の方に目を向けると……キラキラと光る石の欠片を発見。崖に埋没してるから、その先端みたいな物だろうか。鑑定スキルを使って調べてみると。
「うん? 『白金』? お、プラチナってこと?」
『そうそう~。これ、人族は好きでしょう?』
「おおおおお~。精霊王様、ナイスです!」
大喜びの私は、むき出し部分の周辺をホリホリするんだけど……なんか、どんどんデカくなってない?
「え、これ、かなり大きかったりする?」
『……そうねぇ。結構?』
「ど、どれくらい?」
おどおどしながら聞いてみると。ん~? と一瞬考えてから、ニッコリ笑って言った。
『さっきの熊くらい?』
思わず絶句。そして、崖へと目を向ける。そして手元は……小さなシャベル。そう、私はシャベルで掘っていた。だって、今まではそれで十分な量しか採れなかったし。ツルハシとかクワみたいなのは用意してこなかった。
「……無理でしょ」
呆然としながら呟くと、土の精霊王様が呆れたように言い出した。
『何言ってるの? ここに私がいるのよ? 言ってくれれば掘り起こしてあげるわよ』
「……え」
『てっきり、美佐江が掘るのが楽しいのかなぁ? と思ったから手伝わなかったけど』
「……言ってよぉぉぉっ」
最初は精霊王様の力を、こんなことに使っていいんだろうか、と少しだけ後ろめたく思いつつも、目の前に熊サイズのプラチナの原石がドシンッと現れたら、もういいやって思った。
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