第217話
私の態度に、地図の赤い点々が増幅中。そりゃ、そうか。自分の国の皇太子相手の暴言だものね。赤い点がなくても、視線でも感じてますから。
実は、精霊王様たち、天井近くで私の護りを固めてたりする。あんまり目立つのも余計に警戒されるからと、今ははっきりとした光の球の状態をしていない。たぶん、教会関係者あたりでは見える人がいるかもしれないけれど、ここにいる面々では、気付いてもいないだろう。じゃなきゃ、私もあそこまで言い切れる度胸はないわ。
また、マズいことに、精霊王様たち、怒りMAXなんですわ。もう、私にはビリビリ感じるのに、こいつら、まったく感知しない。暴発しそうなのを、なんとか抑えてる私、偉くない? オッケー出したら、一気にこの国、無くなってしまうだろうね。
「……お前の保護者達は、こちらの手のうちにあるのだぞ」
訝し気に問う、皇太子。まったく、しつこい男だな。
そもそも、第一王子たちの護衛は、レヴィエスタでも精鋭と言われる者たちだと聞いている。その中でもピカイチなのは兄様。ちょっと私には残念なところはあるけれど、あれでも近衛騎士団の副団長ですよ? あの魔の森から国を守ってるリンドベル辺境伯の一族を、甘く見過ぎではありませんかね?
「……自力でなんとかするでしょう」
「なるほど。では、これならどうか」
これまた厭な笑い方をしながら、皇太子が侍従に持って来させたのは、大きくてシンプルな姿見。ただの鏡かと思ったら、映っていたのは、イザーク兄様とどこかのご令嬢の後ろ姿。監視カメラの映像を見ているみたい。
場所は、どこかの庭園だろうか。楽しそうに話している様子に、こちらでのお知り合いの一人かな、と勝手に想像する。この女性を相手にしてたから、私への返事が出来なかったのか、と思うと、兄様にもイラっとした。
「これが何か?」
「あれは、我が国の公爵家の一人娘でな……リンドベル卿とは学友だとか」
「ほう、それで」
「あの者はリンドベル卿との婚約を望んでおる」
「ほうほう」
兄様が望むなら、それはそれで仕方がないだろう。チラッともう一度、二人の姿に目を向ける。まぁ、美男美女だし、お似合いなのかもしれない。
ちょこっとだけ、胸がチクンッとした気がするが、気のせいだろう。
「お前は断ると言うが、リンドベル卿であれば、我が国からの婚約の話は断ることなどできまい。あれもレヴィエスタの貴族であるからな。その保護者でもあるリンドベル家から、お前に我が息子との婚約の話がくれば、断れまい」
こいつ、何言ってるんだろう?
確かに兄様は貴族で、国のために、というならば、受ける話かもしれない。だからって、私が兄様にどうこう言われる筋合いはない。むしろ、言い出したら、こっちから『さよなら』でしょう。
この国の、なのか、この世界の、なのか。貴族や王族の考え方には、ついていけない。
呆れながら、もう一度、兄様の姿に目を向ける。なんかだらしない顔をしている兄様に、がっかりしつつ……そして気付いた。
兄様の腕にからみつく令嬢の腕から、ピンクの靄が溢れ出ていることに。
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