第329話
土の精霊王様からの言葉を聞いてから、再び部屋に来たメイドのエルフたちを意識して観察してみた。
すでに普通には見えないようにしてもらってはいるものの、部屋中に漂っている精霊たち。だけど、メイドたちには認識している気配が微塵もない。そもそもが無表情すぎて、感情が伝わってこなかっただけかもしれない。
一方で、イザーク兄様と情報収集に外に出かけようとした時、カウンターの中にいる執事っぽい人からの視線を背中に痛いほど感じた。
――ううっ、やだやだやだ。
寒くもないのに、思わず、腕を摩ってしまった。
貴族街の中の方は治安は良さそうではあったけれど、たぶん、私たちが必要としている情報は、そういう所にはなさそうなのは明白。
空は、少し茜色になってきている。急いだほうがよさそうだ。
何にしても、まずは色んな情報が集まりそうな冒険者ギルドを覗きに行くことにした。
冒険者ギルドは、港と貴族街のほぼ真ん中くらいにあった。
かなり大きな建物で、その前の道路にはいくつもの出店みたいのが並んでいる。店先もそうだけれど、ギルドの出入り口周辺には、冒険者らしき姿が、あちこちで見受けられる。
港町だからなのかな、と感心しながらドアを開けて中に入ると、一瞬、視線が私たちに集まる。しかし、すぐに逸らされた。そんな中、逸らさないのは……うん、女性の冒険者たちだな。何やら、コソコソ話しながら、イザーク兄様に釘付けになっている模様。
……まぁ、結構なイケメンだから、わかるけどね。
「まずは、この国の地図と、魔物関係の情報を調べたいね」
私はイザーク兄様の方も見ずに、そう言うと、空いているカウンターを探す。やっぱり、若い女の子のところは列が出来てる。空いていたのは、ちょっと、怖そうな感じの白髪のおじいさんのカウンター。
「すみません」
「……なんじゃい」
無愛想な返事だけど、一応、こっちに目を向けるくらいの気はある模様。
「今日、この大陸に来たばかりなの。地図とか魔物の情報とか、知りたいんだけど」
「あ? どっちも、上の売店の向かい側の部屋に貼りだしている」
「ありがと……兄様、行くよ」
おじいさんはあっちに行けと言わんばかりに、階段がある方を指さした。
言われた通りに階段をあがってみると、駅の売店みたいな小さな店があった。数人の十代くらいの若手冒険者たちが、物色中のようだ。
売店には雑多なものが商品として並べられているようだが、これといって珍しい物はなさそう。大陸が違えど、冒険者に必要なものは変わらないみたいだ。
「ミーシャ、こっちだ」
イザーク兄様に呼ばれて振り向くと、ドアのない小部屋みたいなのがあったので、中へと入っていく。
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