第128話
これ、開けてすぐ勢いでつけちゃうお馬鹿さん用ってことよね。
普通さ、見ず知らずの人からの贈り物とかって、鑑定とかするもんじゃないの? いや、そもそも、城に入るときに持ち物チェックとかしなかったんかい。
……あ、そういえば私もノーチェックで入って来てるわ。
私は手に取ることもせず、鋭い視線を男爵へと向ける。
「……結構ですわ。『隷属の腕輪』なんて欲しくありません」
私の言葉に驚いたのは、シャトルワース側の三人だけではない。
「なんですと」
「おい、これはどういうことだ」
部屋の中は騒然となる。イザーク兄様は、今まで見たこともないような怖い顔になってる。彼は怒らせてはいけないね。うん。
「い、いえ、そんなはずはございません!」
「聖女様、開けもしないでそのようなことを口にするとは……例え、聖女様でも、許されませんぞ!」
男爵と魔法使いが猛抗議してきたけど、私の鑑定にはそう出ているのだ。
「聖女様、よろしければ私にも見せていただけますでしょうか」
「ええ」
宰相が難しい顔で聞いてきたので、素直に鑑定を任せた。近衛騎士はそのままの状態で宰相の元へと箱を持っていく。
「よくこの状態で中の物がわかりましたね……この箱自体に鑑定防止が施されておりますぞ」
あれ? 私の鑑定って、いつの間にかに成長してたりする?
宰相は目を大きく見開いて驚きつつ、モノクルをいじりながら、しげしげと箱を見てから、ゆっくりと蓋を開けた。
中身は珊瑚のようなピンクオレンジの石が連なった腕輪。パッと見た感じでは可愛らしいって思うだろう。若い子だったら、安易に試してつけたかもしれない。
でも、私、中身、おばちゃんですから。
「確かに……これには隷属の魔法が付与されていますな。通常の『隷属の腕輪』のデザインではないので、初見でこれを判断するのは難しいかもしれません」
「普通の『隷属の腕輪』って、どんなデザインなんですか?」
私の場合、鑑定結果の文字でしか知らないから、普通のっていうのがわからない。後学の為に聞いてみた。
「そうですね。通常は薄い金属製のバングルですね。物によっては魔石を埋め込んでいる物もありますが……しかし、これは随分と気合を入れたもののようですなぁ……エンゲルス男爵?」
キランッという音がしそうなくらいに宰相のモノクルが光る。
うへぇ。絶対敵対しちゃ駄目な相手、って彼みたいな人なんじゃないだろうか。
「い、いいえ、これは私ではなく、そこの魔術師団の者が持参したもので」
「魔術師団?」
男爵の言葉に、一層顔を青ざめさせたのは、件の魔法使い。
「どういうことですか」
「わ、私は存じませんっ。団長補佐から預かったのです! 万が一、聖女様がご機嫌を損ねるようなことがあれば、差し上げろと!」
……あ~ら。ちょっと、これってマズいんじゃないの?
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