第187話

 アルム様を含め、キラキラしい方々に囲まれ、固まる私。リンドベル家の美男美女で慣れてた気になってました。上には上がいるもんです。


「美佐江~、おーい、戻って来てぇ~」

「はっ!? ……お、おう……アルム様、ど、どういうことですかぁ……」

「あ、戻って来たわね」


 そこでようやく彼らについて説明をしてくれましたよ。精霊だって、精霊。それも、彼らはその精霊の中でも、王様なんだとか。


――青い髪のスレンダー美女は、水の精霊王

――赤毛の短髪美男子は、火の精霊王

――緑のロン毛美男子は、風の精霊王

――金髪のぽっちゃり美女は地の精霊王


 そんな説明されても、私は口をあんぐりあけるしかない。


「アルム様が美佐江に我々のことをお教えしてないものだから、こっちはヒヤヒヤしまくりでしたのよ」

「そうだぞ。お守りしたいのに、手が出せないことのもどかしさと言ったら」

「……へ?」


 なんでも、精霊という存在は相手に認識されないと、手も足も出ないんだって。

 一応、私には精霊王たちの加護がついてたんだけど、認識してなかったもんだから、ナビゲーションで見ても灰色状態だったらしい。今は、しっかり文字反映されてました……そもそも、その項目にすら気づいておりませんでしたよ……。


「この加護って……」

「美佐江様の魔法の威力も変わりますし、同属性の魔法攻撃は相殺されますわ」

「え、それって、ほぼほぼ無敵じゃないの」


 これに光と闇の精霊とかいたら完璧なのに、と思ったら、彼らはあんまりこちらの世界に興味がないんだって。一緒に来るように言ったらしいんだけど、二人はラブラブだから、とのこと。なるほど、としか言えない。


「ああ、もう、時間がないわっ! とにかく、彼らが貴女を守ってくれるから」

「ま、守るってどういうこと!?」


 ポポポンっと音と同時に、先程の美男美女たちが……掌に乗るような人形サイズの……それも、ずいぶんとぽっちゃりさんに変わって、目の前で浮いている!? その変わりように、私も唖然とするしかない。


「いつでも貴女の側におりますわ」

「どこにいてもな」

「何があっても」

「お守りします」


 彼らは誓いのような言葉を残して、アルム様共々、しゅんっと目の前で消え去った。

 それとほぼ同時に、時間の流れが戻る。


「ミーシャ、どうした?」


 一人立ち上った状態だった私に、隣で跪いていたイザーク兄様が驚いたように、抑えた声で声をかけてきた。気が付けば、エドワルドお父様たちも、同じように跪いた状態で私を不思議そうに見上げてる。

 

「え? あ、うん、なんでもないよ」


 ここで話をするわけにもいかない。周囲には、他の信者の姿もちらほら見えている。そもそも、なんと説明したらいいのか、驚きの連続で混乱気味の私では上手く説明できないと思う。

 

「皆様、お揃いですか」


 いつのまか礼拝堂の横のドアから現れた、謁見の時にお会いした枢機卿様がにこやかに声をかけてきた。その後ろには部下の方々とともに、彼と同世代くらいの男性が、驚いたような顔でこちらを見ている。格好からして、この男性が教会本部からいらしたという枢機卿様かもしれない。


「久しぶりですな。エンディメン枢機卿殿」

「おお、エドワルド殿! なんとアリス様もご一緒でしたか!」


 エドワルドお父様たちが和やかに話をしようとしている脇から、先程の驚いた顔をしていた男性が、颯爽と私の前で跪いて頭を下げると、こう言った。


「聖女様、お会いできて光栄でございます」


 ……うん?

 これから認定してもらうんじゃなかったっけ?

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