第186話
待って、待って。ねぇ、誰がこんなアルム様作ったの? もしかして、この姿がこの世界でのアルム様の一般認識? ていうか、別人じゃないのっ!?
「ミーシャ」
イザーク兄様の小さな声に、慌てて兄様の隣で跪く私。そして、当然、祈るのだ。例え、届かなくても、アルム様に伝えなくちゃ!
『アルム様っ! いいの!? こんな老人でっ!!』
『きゃあぁぁっ! 美佐江っ! 来てくれたぁぁぁぁっ!』
……まさか、アルム様から返事というか、叫び声が聞こえてくるとは思わなかった。
えっ? と思って顔を見上げると、あの老人の中から、ぬーっと、そう、ぬーっとアルム様(当然、若々しい姿)が抜け出てきてポンッと目の前に降り立った。
「え、え、えっ!?」
「ごめん、ごめんねぇっ! 本当は、ちゃんと教えておかなきゃいけなかったのっ、でも、いっつも用件だけ伝えちゃうと、ついつい忘れちゃってぇ……」
「え、えと、何のことでしょうか」
「あ、ああ、ごめんなさいっ、そうよね。何のことかわかんないわよね」
くねくねしながら謝る姿に、つい、吹き出しそうになる。と、同時に、周囲のことに気が付いた。ヤバイ、なんか、神様と話してる姿とか、すんごいヤバイんじゃないっ!?
慌てて周りに目を向けて、私は固まってしまう。なぜって。
――誰一人、私の方を見ている者がいないのだ。
場所は変わらず教会の中だ。だけど、誰一人、こちらに意識を向けてもいないし、そもそも動いている人がいない。奥のドアの方から歩いている人がいたはずなんだけど、その人も動きもせずに、片足上げて止まっている。
どういうこと?
「あっ、大丈夫よ、今は時間が止まってるから」
「じ、時間!?」
「でもっ、あんまり長くは無理だから、用件だけ言うわ」
私は唖然としながら、アルム様へと目を向ける。相変わらず、アポロンなアルム様。あの老人とは完全に別人よね。そして、今回も用件だけ言うらしい。
「あのね、まず一つ目は、教会に来てくれれば、短い時間ではあるけれど、こんな風に私とお話できるのよ。だから、何か困ったら、相談に来ていいのよ」
えぇぇぇ。それ、今さら?
そう思うのは、私だけではないはずだ。
「もっと早くに言ってくださいよぉ」
「うん、うん、ほんと、ごめんっ」
だからといって、実際にアルム様とおしゃべりできても、今以上の状況になってたかは微妙ではあるけど。
「それと、美佐江に紹介しておきたいのがいるのよ」
アルム様がそう言い切る直前に、ポポポポンッという音共に、美男美女が空中に現れた。
「え、え、何!?」
「やっとですわ」
そう言って、私のそばへとやってきて微笑むのは、青く長い髪を腰まで伸ばしたスレンダーな美女。
「まったく、神のくせに、抜けてるから」
腕を組んで、アルム様を睨みつける、赤毛の短髪で筋骨隆々な長身の男。
「まぁ、わかってましたけど」
まったく、という感じで両手をあげて呆れてるのは、緑の髪を一つに束ねた男。
「それよりも、美佐江様、お会いしとうございました」
ニッコリ微笑んだのは、一番背が低く、ぽっちゃりとした金髪の穏やかな表情をした美女だった。
……? えと、誰ですか?
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