第185話
連絡が来たからといって、すぐに行くのも『聖女』という身分に拘ってるみたいで癪に障る。もうすぐ夕食の時間だったのもあって、翌日に王都に向かうことにした。
食事の際に、リシャール様との話し合いについても報告した上で、確認してみた。
いくつか話はあがったことはあるそうだ。カリス公爵のところのエミリア様もそのうちの一つ。あの偽聖女もそうだ。だけど、第三王子ということもあって、比較的自由にしていいということにはなっているとかで、現段階では、公式なリシャール様の婚約者候補というのは決まっていないらしい。
私の事は、あくまで話題の一つに過ぎず、イザーク兄様が本気で心配するほどのことじゃなかったんですよ~、と伝えれば、皆が皆、一様にホッとしてるのには、苦笑いしてしまった。
それにしても、めんどくさいね。王族っていうのは。
翌日、朝早くから私たちは王都に向かうべく、玄関フロアに集まった。屋敷の転移の間を使うよりも、私がみんなまとめて転移する方が楽になっちゃっているのだ。飛んでいく先は、ちゃんとあちらの転移の間。王都の屋敷の者たちは、私が転移できるのをなんとなくわかっているけど、大人数を飛ばせることまでは知らないからね。色々、余計な情報はバラまかないに限る。
今回王都に向かうのは、エドワルドお父様とアリス母様と私。あちらではイザーク兄様も来てくれるとのことなので、少しだけ安心した。
屋敷の皆に見送られて飛んだ先では、当然のようにギルバートさんが待っていた。そして、サロンで待っていたイザーク兄様とも合流すると、王都の教会へ向かった。うちのお屋敷があるのとは反対側にあったようで、初めて見たけど……これまた、ずいぶんと大きくて立派な建物だ。
「なんか……大きいねぇ」
「フフフ、ミーシャってば、そんな身体を反らして見上げなくても」
「いやいや、だって」
正面の建物の尖塔部分の高いこと、高いこと。パッカーンと大口開けて見ていたら、イザーク兄様に背中を軽く押されて、我に返る。うん、ボケッとしてる場合ではないな。
教会の中は、新婚旅行の時にいった海外の古い教会を思い出させるものがある。
静謐な空気の中、一人キョロキョロと見て回っているうちに、正面に二メートル以上はある大きな石像が立っているのに気付く。
――くるくる天然パーマ
――両手を広げた立派な体躯
――緩やかなトーガを羽織る堂々たる姿
そこまではいい。しかし。
立派な顎髭を生やした老人の姿に、思わず固まる。これって、まさかとは思うけど。
「さぁ、ミーシャ、アルム神様の前だ、跪いて祈ろう」
……えぇぇぇぇぇ。
エドワルドお父様の言葉に、叫ばなかったことを誰か褒めて。
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