第184話
お土産を買って、気分よく領都の屋敷に転移で帰ってきた私たちだったけど。
「えぇ? また王都に戻れと?」
お菓子の入った木箱をメイドさんに渡しながら、そう答える私。中身は、王都でも人気のあるクッキーの詰め合わせ。パメラ姉様がお気に入りの店らしく、お姉さまと一緒に並んで待ったのだ。だから、戻ったらすぐにお茶にして食べようと姉様と話してたのに。
「すまんなぁ。帝国の教会本部から、枢機卿様方がいらしたらしい。こちらからの手紙を受け取ってすぐに、転移陣を使っていらしたようだ。聖女認定をしたいというのだよ」
「聖女認定?」
エドワルドお父様が小さな手紙を手にしながら、申し訳なさそうに言う。相手は宰相様で、伝達の魔法陣で送られてきたものだそうだ。
確かに口頭や手紙で伝えられたところで、はい、そうですか、にはならないのはわかる。この国の枢機卿様たちの前で、解呪をしてみせたところで、本国からしてみれば、認定に足るものではないのだろう。
しかし、どんな形で聖女認定なるものををするのか、具体的なことはさすがにお父様たちも知らないようだ。
「王都の教会でお待ちいただいているそうなんだ。一週間ほど滞在されるらしいが、お待たせするのもいかんだろう。宰相殿からも、我が家も転移陣を使って来い、とのことだ」
「……さすが、国家権力」
「まぁ、そう言うな。教会側も必死なんだろう。あの偽聖女、帝国側でもいいようにやっているらしいからな」
「そうなんですか?」
どうも『聖女』というワードが一人歩きしているのだろう。それが、アルム様を神と崇める教会の認定ではなくても、『聖女』であることが大事なのだと。
帝国の皇族の中にも信者がいるらしく、その新興宗教の関係者を重用しているとか。
……うわー、めんどくさい。巻き込まれる姿しか、思い浮かばないよ。
「まさか、私に帝国まで来いなんていう話にはならないでしょうね」
「……ないと否定できないところが困るところだな」
「下手すれば破門とか?」
パメラ姉様、それ冗談にならないと思うけど。
「というか、そもそも、私、その教会の信者じゃないし」
腕を組みながら、ムッとする私。
だいたい、アルム様のことは好きだとしても、教会って組織はまた別だよ?
「うむぅ……とりあえず、認定してもらってこよう。教会の出方も、こちらで勝手に想像しても、どうしようもあるまい。出たとこ勝負だ」
「さすが、エドワルドお父様だわ……」
お父様たちに迷惑がかからないならよし、何かあったら……どうしようかしらね? フフフ。
私、無意識に悪い顔で笑っていそうだわ。
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