第37話

 中に入ってみると、さっきよりは落ち着いたみたいだけど、やっぱりザワザワしてるのは変わりない。あのスキンヘッドたちは酒場の奥の方で盛り上がってるみたい。バカ騒ぎしている声が聞こえてくる。

 私はさっさと受付のほうへと向かう。今朝、カウンターにいたお姉さんの姿はなくて、昨日相手をしてくれた赤毛のお姉さんがいた。相変わらず無表情。

 空いているカウンターはそこしかなかったから、その受付へと向かう。


「今朝受けたクエスト、薬草採取してきたんですけど」

「では、こちらに出してください」

「あ、はい」


 肩掛けバッグから取り出すと見せかけて、アイテムバッグから麻袋を取り出す。ちゃんと、ギルドに渡す用ね。


「確認させていただきますね」


 お姉さんは一枚一枚、チェックしてる。受付でも、鑑定みたいなことができるんだろうか。カウンターの上に並べられる『ハプン草』、何気に品質別に並んでる。一応、バラバラにしてたんだけど、比率が三分の一ずつになってるんだよね。そう思うと、内心、ドキドキする。

 チラリと視線を向けられた時、ドキッとしたけれど、ニコッと笑ってみせる。お姉さん、表情変えずに、再び、チェック始める。なんか、怖いよ。だから人が並んでなかったのか? などと、失礼なことを考えている間に、チェックは終わったみたいだ。


「……はい、確かに枚数ございます」

「よかった」


 ギルドカードを渡して、また黒い箱に翳すと、ピッと音がなる。これで記録されたってことなんだろうな。


「あの、もし多めに持ってきたときは買取もお願いできるんですよね」

「はい。その場合の窓口はあちらになります」


 お姉さんは、受付の奥の方を指さした。『買取』『解体窓口』という看板が下がってる。両方ともに何人か並んでるっぽい。

 まぁ、今は売るものはないので、そのまま、ギルドカードと初めての報酬を受け取るとお姉さんに挨拶をしてその場を離れようとした。


「おっと……なんだぁ? このちびっこいのは」


 なんで、こんなとこに立ってるんだよ、スキンヘッド。さっきまで奥の酒場にいたんじゃなかったのか。でかい肉の塊のあまりの酒臭さに、眉間に皺がよる。あの短時間にどれだけ呑んだんだか。


「ああ? なんだ、そのツラはぁ?」

「ゲールさん、飲みすぎですよ」


 絡み酒かよ、とイラっとしてる私。その背後にいた赤毛のお姉さんが冷ややかな声で注意する。ギルドでトラブルとか起こしちゃダメなんじゃないの?

 というか、私、帰りたいんですけどぉ。

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