第33話

 やっとお嬢様が壁から離れてくれたので、じっくりとクエストを選ぶことができた。でも結局、私が取ったのも同じ薬草採取。ただし、薬草の種類が違うみたい。採取の量は……三十枚。

 受付のカウンターにクエストの紙を持って向かう。今日は、昨日の赤毛を一つに纏めたにそばかすのお姉さんはいないみたいだ。

 カウンターに座ると、ちょっと色っぽい感じのお姉さんに紙を差し出す。


「はい、こちらのクエストね。ギルドカード、貸してくれる?」

「はい」


 お姉さんが黒っぽい箱の上にギルドカードを置くと、ピカッと一瞬だけ光った。


「はい、登録しました。期日内に完了報告がないと、未達成の実績がついちゃうから気を付けてね」

「えと、これは罰金とかは取られないんですか?」

「こういう採取系には罰金はないわ。未達成の実績だけよ」


 それでも未達成が重なると評価が下がるらしい。気を付けよう。


「ちなみに、今回の薬草は……ハプン草ね。これは街の北側にある草原に分布してるわ。最近、魔物の姿が見かけられるらしいから、気を付けてね」

「は、はい」


 まさかの魔物発言。たぶん、私の周辺には弱い魔物とかは出てこないと思うけど。あ、もしかして、上のランクの討伐クエストとか、未達成が増えたりして、なんて思ったり。

 お姉さんからギルドカードを受け取り、バッグにしまうふりしてアイテムボックスにしまいこむ。バッグの中じゃ、そのうち落としたりして失くしそうだもの。

 いざクエストに向かおうとカウンターから離れようと立上ったら。さっきのお嬢様とスキンヘッドのロリコンがまさに出て行こうとしているところが見えた。あの二人以外にも、二人ほどお付きの人っぽいのがついている。ちょっと若い従者っぽいのと、弓を背負ったひょろっとした若い男。もしかして、彼女の護衛みたいなのかしら。護衛付きで薬草採取って、どうなのよ、と思って見ていると「ああ、あれね」とお姉さんが声をかけてきた。


「はぁ」

「あれ、うちの領主である公爵令嬢。といっても末っ子で甘やかされてるんだけどね」

「そうなんですか……」


 あっちとは採取場所は真逆にあるから気にするな、とのこと。うん、それならそれでいいんだけど。

 私はペコリと頭を下げると、出口へと向かう。ギルドの重いドアを開けて外に出る。


 この時間になると、人通りが出ているから、少しだけ壁際によると、ナビゲーションを呼び出して地図を確認する。この街の地図で見ると北側にも出入りのできる門があるのがわかった。 


「よぉし! 頑張りますか!」

 

 私は一人で気合を入れると、地図を見ながら、北側の出入り口へと向かい始めた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る