第9章 おばちゃん、家族(?)たちと遭遇する
第69話
本当なら、レヴィエスタへと向かう街道に抜けて、そのまま国境を越えるはずだった。しかし、さすがにあのオークの群れは看過できないということで、近くの町へと向かっている。オズワルドさんとカークさんの馬は逃げちゃって、戻って来なかった。だから二人は徒歩、というか軽いジョギング程度のスピードに。必然的にペースは落ちる。でも、かなりの距離をこのペースって、さすがだわ。
「方角はあっておりますか?」
オズワルドさんが馬上の私に問いかける。まぁね。地図あるの、私だけみたいだし。ちゃんと確認するよ。
「はい。このまま真っ直ぐです。もうちょっとしたら、見えてくるはず」
オークたちと戦った場所までは『身体強化』の魔法もあって、昼くらいには着いてたはず。本来なら討伐部位を切り取ったりしなきゃいけないんだろうけど、そんな暇はないってことで、私のアイテムボックスに氷漬けのオークたちが入ってる。全部入れたら、三人ともに引かれた。いいじゃん。ちゃんと入れられたんだからさ。
「もしや……あれですかね」
目を眇めながらカークさんが呟く。
私も前の方に目を向けると、確かに町っぽいのが見える気がする。日は傾きつつあるけど、まだ夕方には少し早い。
「よし、オズワルド、カーク、お前たちはゆっくり来い。先に、町に行ってギルドに報告してこよう」
「申し訳ございません」
「すぐに追いかけます」
イザーク様は頷くと、思い切り馬を走らせた。この子も頑張ってるよなぁ、と思って、ついつい肌をなでなでしてしまう。少しでも癒されますようにと思ってたら、無意識に魔法をかけてたみたい。なんか、どんどんスピードアップしてるよ。
おかげですぐに町に到着。今朝までいた町とは違って、もう少し大きいかもしれない。塀に囲まれてはいないから、そのままの勢いで町中の冒険者ギルドの建物を探す。私たちも慌ててるせいもあって、町の人たちも驚いて見てる気がする。
「あった!」
ギルドの建物の前に止まり、飛び降りるイザーク様。そしてそのまま、私へと手を差し出す。うん、その腕の中へ飛び降りろってか。いや、さすがに、この大勢の観客の前では無理っす。
「大丈夫です」
さすがに慣れたよね。
ちょっと残念そうな顔してるけど、そんな場合じゃないんだよ。
頑張って飛び降りると、イザーク様の腰を軽く叩く。背中は高くて無理だった。
「早く行かなきゃ」
「あ、ああ」
ちょびっと寂しそうな顔するイザーク様を、可愛いとか思ったのは内緒だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます