第79話

 今私たちは、ギルドの応接室にいる。

 ギルマスがわざわざ、我々に使ってくださいというので、ありがたく使わせてもらってる。エイミーさんが人数分のお茶をいれてくれた後、居残りたそうなギルマスを連れて出ていってくれた。

 当然その後、『結界』を使いましたよ。だって、身内の話なんだもの。


「それにしても、ずいぶん早くに着きましたね」


 椅子に座って、呆れたように聞いてるイザーク様。うん、私もそう思う。だって、昨夜、イザーク様と話した時点で、オクトにいるって話だったもの。


「おお、お前からの伝達の鳥が来てすぐに、宿を出てワイバーンに飛び乗ったんだ」


 私の隣に座って、自慢げに話し出した『父上』こと、エドワルド・リンドベル様。年齢は私の実年齢よりも少し上の五十四歳。それにしたって、随分と若々しいけど。

 ワイバーンっていうのは空を飛ぶ小さな竜だそうだ。竜なんて、想像だけだったら某有名アニメの神龍みたいなのか、あるいは、西洋のドラゴン的なモノが頭に浮かぶ。それに乗って飛んでくるって、どんななんだろう? 話が落ち着いたら、見せてもらえないだろうか。

 そのワイバーンを貸してくれる場所は、基本的には大きな街にしかないそうだ。早さでいえば、馬を走らせるよりも早いことは早いらしい。


「夜間にワイバーンを飛ばすなんて……さぞや嫌がったでしょうに。その上、オクトからここまで、飛ばしても二日はかかるはずじゃ」

「あらあら、誰に向かって、そんなことを言ってるの?」

「母上……ああ、そういうことですか」


 イザーク様は、何かに合点がいったのか、苦笑いを浮かべている。

 私を間にして、エドワルド様の反対側に座るのは、美魔女……アリス・リンドベル様。ほぼ同い年って知って、結構、落ち込む。いや、うん、今は私の方が見た目は若いけどね。


「どういうことです?」


 不思議に思って隣のアリス様を見ると、ニッコリと微笑む。私の頭は撫で心地がいいのか、アリス様、ずーっと撫でてる気がする。


「私、こう見えて、精霊魔法の使い手なの。だからワイバーンの飛行の時には、風の精霊にお願いすると、少しだけ早く飛ぶことが出来るのよ」

「……少しで一日短縮とか、ありえないんですけどね」

「イザーク」

「……はいはい」


 イザーク様の言い方に、なんとなくワイバーンが無理な飛び方させられてきたんじゃないかって、想像が出来てしまう。後で、労ってあげないといけない気がする。

 こんな小さな町には、ワイバーンを扱う場所なんて無さそうな気がしたが、一応、レヴィエスタ王国との国境近くということもあって、受け入れ場所はあるらしい。まさか、冒険者ギルドの裏とは、知らなかった。

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