第78話

 いきなり二人の派手な登場にギルド内は騒然となるけど、ギルマスの再びの登場で、すぐに静かになってしまった。皆、ギルマスが何を言い出すか、聞き耳をたてている。

 ギルマスの顔色は、あまりよくない。大きく息を吐いてから、ギルマスは部屋の中にいる者皆に聞こえるように大きな声で話を始めた。


「……オクトと確認をとった。応援には来てくれるそうだ……しかし、やはり移動時間が問題で、早くても三日後になる」


 ああ……、とか、うう……、と残念がる呻き声があちこちから湧き上がる。その様子に気付いた私に抱きついていた美女が「どういうこと?」と小声で聞いてきたので、先程マイクに聞いた状況について伝えた。


「まぁ……。イザークからの手紙でも書いてあったけれど……ちょっと、マズイわねぇ」


 そう言って立ち上り、『父上』に目を向ける。『父上』もイザーク様から話を聞いたのか、軽く頷く。そして、ギルマスの方へと目を向けた。


「ギルマス、話は聞いた」


 その声に、『父上』たちの存在に気付いていなかったギルマスが、初めてそこに誰がいるのかに気付いて、驚きで大きな口を開けている。言葉も出ない、ってやつだろう。『父上』はそのまま言葉を続ける。


「私と妻はこれでもAランクだ。それに、もうすぐ息子たちもこっちにやってくる。そうだな、たぶん、午後くらいには着くだろう。そうすれば、Aランクが四名になる。それに、こいつらも、そこそこに使えるだろう」


 クイッと顎で指ししめしたのはオズワルドさんとカークさん。二人は、苦笑いを浮かべている。後から来るというのは末っ子の双子たちってことか。昨夜の話ではもうすぐAということだったけど、ランクが上がってたってことなのか。それにしても、午後に着くって、どうやって? あ、もしかして、さっき言ってたワイバーンってやつ?


「我々が先陣をきるから、撃ち漏らしたのを、ここの者たちで潰せばいい。我々だけで殲滅は無理でも、ある程度削れたところで、オクトの連中に最後を締めて貰えばよかろう」

「リ、リンドベル様!? な、なぜここに!?」


 やっとまともに声が出たギルマス。完全に裏返ってたけどね。


「孫を迎えに参った」


 満面の笑みで答えた『父上』は、今度は私の方へと目を向ける。その瞳には慈愛の情が溢れていて、なんだかこっちが照れくさくなる。その視線から逃げるように、私は隣に立つ美女を見上げる。彼女も嬉しそうに微笑みながら、私の頭を優しく撫でている。

 うむぅ。同世代の美女にされているせいか、ちょっと微妙な心境になるのは、仕方がないと思う。


「ついでにオーク狩りといこうではないか。上位種がおるなら、これを狩らない理由はなかろう。孫よ、旨いオーク肉を食わせてやるぞ。ガハハハ」

「さ、さすがです。リンドベル様」


 豪快な『父上』の言葉に、さっきまで死にそうなくらい青ざめてたギルマスが、憧れの人にでも会ったかのように顔を赤らめている。いい年したおっさんのその様子は、ちょっと引くものがあった。

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