第77話
迫力のある太い声に、完全に固まってしまう。あんな大声、初めて聞いたよ。あっちの世界の大声大会に出たら、絶対優勝するね、なんてことを考えてたら、こっちの方へとノシノシと歩いてくる。その姿に、どことなく見覚えがある気がして、なんでだ? と思っていたら。
「父上!?」
イザーク様が驚きの声をあげた。
まさかの『父上』発言。髪の色は同じような茶色い髪に、瞳も同じような茶色。目の色は違うけど、イザーク様が年齢を重ねたら、こんな感じになるかも? と、思わず見比べていると、その『父上』と、バッチリ目があった。
「おおおっ! やっと会えたぞ!」
ドドドドッという音を響かせ突進してくる『父上』に、私はビビッてイザーク様の後ろに隠れてしまった。
「父上! ミーシャを脅かすのはやめてください!」
「イザーク! 孫だぞ、孫! ちゃんと顔を見させておくれ!」
「……貴方」
イザーク様の目の前で跪き、私の方へと手を差し出す姿に、唖然としていると、冷ややかな女性の声がドアの方から聞こえてきた。その途端、その体勢のまま、ピシリと身体が固まる『父上』。
「私にワイバーンの世話を任せて、いきなりいなくなるとは、どういうことです」
ギギギッと音をさせながら、作り笑顔で振り向く父上。
……うん、完全にやらかしたね。
カツカツと足音をたてて現れたのはプラチナブロンドを高く結いあげ、大きな青い目で『父上』を睨みつけ、冒険者の服を颯爽と着こなしている美女。クールビューティーの代名詞、往年のハリウッド女優、グレース・ケリーを彷彿とさせるその姿に、周囲の冒険者たちの視線が釘付けになってる。
この『父上』の奥さん、ってことなんだろうか。すごい美女。いや、美魔女、なのか?
「あ、す、すまん。アリス」
「すまん、じゃ、ありませんわ。徹夜で飛ばして、あんな風に放り出されたら、ワイバーンだって、怒りますわよ」
「いや、だがな」
「だがな、じゃ、ありませんわ」
腕を組んで、プンッと怒ってみせる美魔女。今度はその彼女とバッチリ目が合う。その途端、クールビューティーな彼女が、満面の笑みを浮かべる。うわぁ~、綺麗過ぎて、目が離せない。
気がついたら、彼女にギュッと抱きしめられていた。
冒険者って、どこか汗臭いイメージあったのに、この方からはフローラルな香りがして、ちょっとびっくり。
「やっと、お会いできたわね」
優しくそう言うと、彼女はゆっくりと離れて、じっくりと私の顔を見つめる。こんなに近くに顔があるから、ついつい観察しちゃうよね。年齢的に言っても私と同じくらい? イザーク様の年齢の子供がいるとは思えないくらい、若々しい。冒険者をやってるのに、この肌の美しさの秘訣って何?
「あの、母上?」
頭上から聞こえたイザーク様の声に、今度は周囲からどよめきの声があがった。
……うん、わかるよ、声をあげたくなる、その気持ち。
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