第136話

 隠蔽スキルって本当に便利。私の存在に気付かずにいる、屋敷の中で隠れてた三人のすぐ傍まで行って『スリープ』かけられちゃうんだもん。

 その結果がこれ。黒ずくめの男が二人に、メイド服を着た女が一人。それぞれが潜んでいた場所(図書室、最上階にある物置、食料のおいてある倉庫)で倒れてる。万が一、起きられたら困るから、闇魔法『影縛(シャドウバインド)』で縛り上げてある。さすがに大人三人を、こんな子供の身体の私が連れていけるわけもなく(実年齢の体格であっても無理だろうけど)、再び転移で兄様たちがいる部屋へと移動する。


「お待たせしました」

「ミーシャ!」

「どこに行ってたの!?」

「いきなり消えて、びっくりしたじゃないかっ!」


 兄様たちに叱られて、えへへと笑って誤魔化す私。


「ごめんなさい。それよりも、スパイ三名、捕獲しました。確認のために、誰か一緒に来ていただけます?」

「なんだと。ギルバート、至急、従僕たちを取りまとめて来い。ミーシャ、一番近いのはどこだ。私が行く」


 私の言葉に、すぐに反応したのはイザーク兄様。厳しい顔つきになって、ギルバートさんに指示を出す。ギルバートさんも、慌ててすぐに部屋の外へと出て行った。


「イザーク兄様、こっちです」


 部屋を出ると、私はパタパタと長い廊下を走り出す。それでも、兄様はゆっくりした歩調。というか、それでも追い抜かれるんですけど!


「ミーシャ、悪いが抱えさせてもらうぞ」

「うえっ!?」


 おお……まさかの片腕で抱っこ。そんなに軽いわけないはずなんだけど、子供抱きされて、少なからずショックを受ける私。まぁ、お姫様抱っこされるのも困るけど。

 後をついてきているオズワルドさんは、後ろでプフッと笑いを堪えてるのが聞こえてきた……オズワルドさん、後でお仕置きだ!


「で、どっちだ」

「は、はい、まずは図書室です」


 私たちが図書室につくと、黒ずくめの男はシャドウバインドで縛り上げられたまま、スヤスヤ眠ってる。


「……これはミーシャが?」


 兄様の驚きの声に、私は素直に頷く。


「起きて逃げられたらと思って」

「ミーシャのスリープじゃ、そう簡単に起きないと思うけどな」


 苦笑いしながら兄様は私を降ろして、黒ずくめを軽々と抱え上げる。男を廊下に転げ落とす頃には、屋敷の従僕さんたちが追いついていた。


「これは地下の部屋へ」

「はっ」


 従僕さんの一人が、廊下をズルズル引きずっていった。これを見ると、兄様の腕力の凄さを実感する。さすが、近衛騎士団副団長。


「後はどこだ」

「次は最上階にある物置です。あ、オズワルドさん、食料倉庫にもメイドの格好の女の人がいます。その人もシャドウバインドで縛ってるんで、わかると思います」

「なるほど、では、そっちは私が向かいましょう」


 私たちはここで二手に別れた。

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