第137話
明らかにスパイとわかる三人は地下室へ、先に眠らされている者たちは別室へと連れていかれ、オズワルドさんたちが調べることになった。さすがにその日のうちに調べはつかなかったけれど、王妃様主催のお茶会の前日にはほとんどの者の正体が明らかになった。
まず単純に屋敷の者で悪意のあった者たちのほとんどが、嫉妬絡みだったのには驚いた。
従僕一人、メイド四人。全てリンドベル領出身で、身元もしっかりしてる者たち。そのうち一人はヘリオルド兄様推しで、三人はイザーク兄様推しなんだって。男性はジーナ姉様推し。なんじゃそりゃ、だよね。
ヘリオルド兄様推しは、そう、あの玄関先で真っ赤になった人。元々、リンドベル領の屋敷にいたのを優秀だからといって、ギルバートさんが王都に来てくれるように頼んで来てもらったらしいのだ。あの真っ赤になった悪意は姉様へ向けられてたと思われる。まぁ、無表情だから、そんなこと思ってるなんて、誰も気が付かなかったと思うけどね。
そしてイザーク兄様推しの方々は……単純に私が猫可愛がりされてたのが気に入らなかったっぽい。そりゃぁね。あんなイケメンがこんなちんちくりんを構い倒してたら、苛つく気もわからなくはない。でもメイドたちの間でも、休憩の時に、よく私の悪口を言ってるっていうので、ちょっと噂にはなってたらしい。
ジーナ姉様推しの従僕は、仲睦まじい姿を見せつけられたのがキッカケだとか。単純すぎる……。
彼らは、それなりの退職金を持たせてリンドベル領に戻されることになった。理由は、私が気になって仕方がないから。まだ実害は起きてなくても、先々拗らせたりして何が起こるかわからないしね。
この人たち、普通だったら誰も気付かなかったし、問題にもされなかったはずだ。偶々、私がこの屋敷に来て、悪意感知に引っ掛かってしまったのが運の尽きというものなのだろう。
……お気の毒とは思うけど、私は私が、私の家族が大事なのだ。
そして残りの二人の男性スタッフ。こっちは時期は違うけれど、下男として最近雇い入れたそうだ。それぞれに王都での付き合いのある貴族からの紹介だったそうだけど、どうもそれも怪しいらしい。
執務室にはヘリオルド兄様とイザーク兄様、オズワルドさん、私、そしてギルバートさんの五人が、難しい顔をして集まっている。
「ギルバート」
ヘリオルド兄様の声で、怒りを押し殺しているがわかる。ギルバートさんもそれがわかってるのか、顔が真っ青になってる。
「申し訳ございませんっ! 紹介状を信用しすぎた私のミスです。如何様にでもご処分くださいませっ!」
「……今はこんな時期だ。お前にいなくなられては屋敷の仕事も回るまい。後々、どうするかは決めるが、それまで仕事に精進しろ」
「はっ!」
ギルバートさんの気合の入った返事の声が、執務室に響いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます