第35話

 クエストの目標である枚数以上に手に入ってしまった『ハプン草』。ギルドで普通に買い取りもしてくれそうだけど、今の所、お金はアルム様からのお小遣いで事足りそうだから、売らずに自分用に取っておく。


 この『ハプン草』、傷薬になる薬草で、王都で薬師のおばあちゃんも乾燥させたのを保管してたのを思い出した。採ったばかりのが青々しているのと比べると、おばあちゃんが使ってたのは茶色く変色してて、同じモノとは思えなかったけど。

 鑑定で調べてみると、品質によって効能が変わるのもそうだけど、採りたての状態で調薬に使った方が効果がいいということもわかった。乾燥したものでも傷薬として使えるけど、治りの早さや、傷の残り方が違うようだ。

 せっかく『調薬』のスキルを得たのだから、自分でも薬を作ってみたい。これから先、何があるかわからないしね。


 二つの麻袋を用意して、ギルドに出す分と、自分用とに分けた。特に、状態のいいヤツを多めに自分用に取っておくことにした。悪いのも取って置いたのは、お試し用。絶対、失敗するもんね。


 さくさくと調子よく『ハプン草』を採っていると、その近くに他の薬草もいくつか生えているのに気付いた。例えば、熱さましに効くという『タイムン』、下痢止めに効く『メディカ』。この辺は、そういう薬草が多いみたいで、この機会を逃す私ではない。

 ポーションの材料になりそうな『モギナ』や『メメナ』のような薬草は、こういう草原のようなところには生えていない。たぶん、この森の奥のほう、魔物とかがいそうなところに生えているのだろう。


 立ち上がって、森の方に目を向ける。

 入口付近は木がまばらだから、まだ日差しが入っているけど、ちょっといけば、鬱蒼とした感じになっている。

 今の自分では、採りに行く勇気はない。魔法とか色々使えるはずだけど、まだ経験値低すぎてダメでしょ。例え、私の存在で弱い魔物が出てこなくても、強いのが出てきたら一発でやられちゃいそう。想像しただけで、ブルルッと寒気で身体が震えた。

 今度、魔法の実地訓練しないとダメかもしれない。そう思ったら、気が重くなった。


「そろそろ、戻るかな」


 思った以上に、色々な薬草を採ることが出来た。お陰で、空いてる麻袋がなくなってしまった。ちょっと整理用の袋も調達しないとダメかもしれない。

 夕方というには少し早いけど、距離から言っても、領都に着くころには日が沈んでいそうだ。

 斜め掛けした見せかけ用の肩掛けバッグを掛けなおすと、私は鼻歌交じりに領都へと向かうのだった。

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