第27話
最初の町から離れて二日目の夕方。
街道の先に、城壁らしきものが見えてきた。王都周辺は四つの公爵領に囲まれているから、その一つの公爵領の領都アルトムだ。
長い行列に、この馬車も並ぶらしい。中に入るためには、一度馬車から降りないといけないようで、そのせいで長くなっているみたいだ。
乗合馬車が中に入れたのは、すっかり日が落ちてしまっていた。
私は身分証らしいものを持ってなかったので、通行税銅貨十枚を払って中に入ることが出来た。その時、守衛のおじさんから、冒険者ギルドや商業ギルドに登録すると、身分証がもらえるという話を聞いた。この身分証があれば、通行税はタダになる。
これから先、いくつかの街を通っていくたびに、通行税を払わなきゃいけないことを考えると、今、ここでどちらかに登録しておいたほうが、節約になる……お財布の中身は減らないみたいだけど。
冒険者ギルドは二十四時間営業らしく、いつでも対応してくれるらしい。それだけ緊急対応するようなことがあるってことだろう。まずは、宿屋だけでも確保してから、ギルドに向かおうと心に決めた。
私たちの乗っている馬車は、乗合馬車の集まっているロータリーっぽいところに入ると、ゆっくりと停まった。とりあえず、到着というところか。
ここに入ってくるまで街並みを眺めてたけど、かなり立派な街に見える。通り沿いに宿屋がいくつかあって、どこにいけばいいのか迷う。
集合時間はこの前と同じ、ということで、私は宿屋を探さなくては。とりあえず、御者のおじさんか、護衛でついてきたおじさんに聞いてみるべきか。
「あの」
「ん、どうした」
三人は固まって明日のことを話しているようだった。
「邪魔してすみません、この街の宿屋って、おススメとかありますか」
「あ? いやぁ、俺たちはいつも乗合馬車の警護もあって、宿には泊まってないんだよ」
「そうなんですか」
うわ、予想外の回答。
参ったな、と思っていると、別の乗合馬車から降りてきた冒険者風のお兄さんが、私に声をかけてきた。
「おい、だったら、俺んちに来いよ」
「おう、お前んとこか」
「え、え、え?」
私を置いて、おじさんたちで話が盛り上がる。
どうもこのお兄さん、ここが地元で実家が小さな宿屋をやってるらしい。なんというラッキー。
「明日には俺も、また護衛で折り返し出かけなきゃいけないんだけどな」
お兄さん、オースという名前の港町との往復の乗合馬車の護衛をしているらしい。
その町で結婚して奥さんと子供はそっちにいるらしい。
「お前、一人だけか」
「は、はい」
「よし、じゃあ、先にお前を送っていくか。悪い、すぐ戻る」
お兄さんは自分のところの御者の人に声をかけると、ほら、行くぞ、と私の前を歩いていく。
うう、どんどん離される!
もうっ!ちょっと待ってよ! 足の長さが違うんだよ~!
最後には、お兄さんの後を走って追いかけることになってしまった。とほほ。
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