第56話
結局、私たちが門の前についたのは、閉門間近。日はすでに落ちてるけど、まだまだ私たちの後ろに列は続いてる。
門が閉まってしまったら、この人たちって、どうなるんだろう? と心配になって聞いてみると、そのまま並んだ状態で野営をすることになるらしい。自分たちがそうなったら嫌だなぁ、と思ってたら、私たちはギリギリ間に合ったみたい。
「次っ!」
衛兵の偉そうな声に、ちょっとだけイラっとする。長く待たされたせいもあるから、そこは許してほしい。
馬から降りた私たちは、それぞれに身分証を見せる。
「……リンドベル……はっ! もしや、レヴィエスタ王国のリンドベル辺境伯のっ」
「声が大きい」
イザーク様の冷ややかな声に、衛兵もピシッと固まる。
というか、リンドベル辺境伯って隣国よね? こんな砦にいるような衛兵でも知ってるような有名なの? 不思議に思いながらイザーク様を見上げるが、ちょっと怖そうな顔になってたので、慌てて目を逸らした。うん、今は声かけちゃ、ダメだな。
「言って下されば、脇の門から入っていただけましたのに」
「いや、私は一冒険者として旅をしているところだ。お気遣いは無用に願いたい」
「はっ! さすがリンドベル……」
「もういいかな」
「す、すみませんっ。どうぞ」
衛兵の脇を通り抜け、馬を引きながら私たちは大きな門をくぐろうとした時、子供の悲痛な声が聞こえた。
「なんで、ばあちゃんがっ」
「煩いっ、邪魔するでないっ」
老婆に近寄ろうとした少年を、衛兵が押しとどめている。
門の脇に、なぜか年配の女性たちが集められている。その周りを衛兵たちが取り囲んでいて物々しい雰囲気だ。それをまた遠巻きに見ている人たちの視線は、不安そう。
どうも門のところで行われていたのは、旅人たちの中から老婆を選別していたようだ。
老婆たちへの扱いの雑さに顔を顰めながらも、私たちは町の中へと入っていく。
町の宿屋は三軒ほどあった。まさに上中下、という感じ。夜の間はオムダル王国側の門は開かないこともあって、どこの宿屋もほぼ埋まっていたが、上の宿屋の特別室だったら空いていると言われてしまい、仕方なくそこの部屋に泊ることになった。特別室……お貴族様用ですね、うん。
「ほぇぇ、またスイートルームかぁ……お金大丈夫なのかな」
「ミーシャ様、どうかしましたか?」
「あ、いえ、なんでもないです」
オズワルドさんに呟きを拾われて、慌てて笑って誤魔化した。
カウンターでやりとりしているカークさんの様子を目の端に入れながら、周囲を見渡す。この前泊った高級ホテルっぽい宿に比べれば、もう少し落ち着いた雰囲気。私はこっちのほうが好きかも、なんて思っているうちに話がついたようで、皆が部屋
へと向かうのを追いかけた。
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