第287話

 物騒な雰囲気のヘリウスに、その後をついてくる不安そうなイスタくん。せめて剣をしまえばいいのに。


「なんなんだって……うちの義妹だけど」

「そういう意味じゃねぇ。なんで、こいつは魔物の居場所がわかるんだよ」

「わかるから、わかるのよ」


 私は腰に手を当て、ヘリウスを見上げる。そんな私に、呆れた顔になるヘリウス。


「いや、だから、なんでわかんだよ」

「それ、説明、必要?」

「気になるだろうがっ」


 なんで、私がヘリウスの好奇心を満たす必要がある? そう思ったら、カチンときた。


「なんで教えなきゃいけないのよ。あんただって、自分のスキルのこと、一々他人に説明すんの?」

「……おい、パメラ、こいつの教育、どうなってんだ。年上にこの態度は、貴族としてもおかしいだろうが」

「あ? 今のあんたは冒険者でしょ?」


 パメラ姉様も私につられて不機嫌になる。ていうか、実際はヘリウスの方が年下だし。私の態度は間違っていない……はずだ。


「冒険者にしたって、年長者を敬うというかだな」

「えー、ヘリウスがそんなこという? 散々、冒険者ギルドで年上相手に暴言吐いてたくせに」


 ニコラス兄様の援護射撃開始。まぁ、確かに、こいつなら言いそうだわ。


「都合のいい時だけ、年上だの、貴族だの、振り回す方がよっぽど、躾がなってないよね」

「何をっ」


 私の言葉に、ヘリウスはカッとなったのか、私に威圧を飛ばしてきた。しかし、私の方は結界を張ったままだったせいか、その威力も霧散する。たぶん、普通の子供だったら、あれで軽く意識飛んでたかも。

 それにしても、結界にこんな使い方も出来たのか、と、ちょっと感動する。


「な、なんだと」


 ヘリウスは驚いていたけれど、彼の行動は双子の逆鱗に触れた模様。二人から怒りのオーラが溢れている(ように見える)。


「……ヘリウス。あんた、やっちゃいけないことをやったね」

「ああ、うちの義妹に手を出した」


 二人がすぐさま、攻撃体勢に入る。ヘリウスはイスタくんを背後に回して、防御の構えだ。


「や、待て待て、ていうか、本当に、こいつ、なんなんだよ!」

「お前が知る必要はないっ」

「ちょ、ま、待てって!」


 うーん。本当はこんなところで揉めたくはないんだが、と思っているうちに、双子がヘリウスに襲い掛かってた! もう、脳筋双子めっ!


「はぁ……」


 ガンガンと剣と弓矢で襲い掛かる双子に、負けていないヘリウス。獣人って魔法があまり得意じゃないイメージだったんだけど、ヘリウスは風の魔法で防御をしているようだ。目の前の状況に、彼の凄さを実感しながらも、大きくため息をつく。

 そして、地図情報を確認する。周囲に赤い点はないものの、出口までは、まだ距離がある。たぶん、三人だったら、私の浄化の力があればもっと早く進める。ヘリウスたちを切り捨てるべきか、そう考えてた矢先。


「おじさんっ! 止めてっ!」

「イスタリウス!? 何を言うかっ、くそっ」

「我々が悪いのですっ! 『聖女』様、どうか、お許しくださいっ!」


 ……おうふ。

 まさかのイスタくんの方が気が付くとは思わなかった。

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