第108話
さすがに『来い』と言われて当日はないだろう。それでも王様の言葉だけに、仕方なしに、翌日の昼頃にこちらを出ることにした。
それまで、リンドベル家一同で、これからの私のことについて、話し合いをすることになった。
「ミーシャは、どうしたいと考えている?」
真剣な顔で聞いてくるのは、リンドベル辺境伯であるヘリオルド様。隣に座るジーナ様も顔を強張らせてる。他の家族たちも興味津々。イザーク様も、なぜか緊張気味だ。
「……さすがに、王都で『聖女様』とあがめられるのは、嫌だなぁ、と思ってます。でも、せっかく授かった力ですから、何かしら皆さんのために使えればいいな、と。」
そうなのよね。浄化って能力、魔物のいるこの世界では貴重なんだろうなって思う。アルム様曰く、私がいる場所から中程度の都市の範囲で浄化が可能とは聞いている。リンドベル領の領都周辺くらいまでは、ある程度のレベルの魔物の出現は抑えられているだろう。
まぁ、この前のオークたちの場合は、統率する存在があったから、襲い掛かってきたようなもんなんだろうと想像する。
でも、だからって積極的に魔物がいるところに行け、とか言われたら断然拒否でしょう。
そもそもが無理矢理呼ばれただけですもん。
「でも、せっかくこの世界に来たんです。二度目の人生、楽しみたいと思っています。例えば、もうちょっと魔法のことを知りたいとか、ああ、あの伝達の魔法陣、あれは私でも使えないみたいなんです。あれを使えるようになりたいかな。それに、スキルに調薬っていうのがあるので、これも伸ばしてみたいと思うのです。あちらでは、ただの主婦でしたから」
そう、薬学なんてまともに学んだことなんかない。完全に文系だった私に、調薬スキルなんて、ちょっと嬉しいじゃない。それに昔遊んだゲームに出てきた『ポーション』とか、作ってみたい。逃亡中は、薬草だとか道具だとか、そんなの集める余裕もなかったから、一から始めて見るのもいいかもしれない。
「まぁ……ミーシャは、学びたいことがたくさんあるのね」
「そうですね、肉体的に若返った分、頭の方も学んだら実になりそうですしね」
アリス様が面白そうに問いかけてきたので、素直に思ったことを返す。おばちゃんの脳のままだったら、どんなに勉強しても記憶力に限界がありそうだけど、今の自分だったら、ちゃんと覚えられると思うのだ。
「それでは、色々と学ぶとして、その後は?」
「うーん、危なくない程度であれば、冒険者の仕事も興味はあるし、自活できるようにはなりたいですね。ああ、薬師みたいな仕事ってあるんでしょうか」
「あるわよ、でも、ミーシャが薬師って……魔法で治しちゃえるんじゃないの?」
「……そうですね。でも、治癒の魔法って基本的に高額なんですよね。一般庶民には手が届かないって聞いています。そこで私ができるとなると、自分の性格としてあんまり高額で受け入れるってのは無理というか。そうなると値段を安くして、結果、人がいっぱい来そうだし……あんまり騒がしいのは嫌だなぁって。例えば、ひっそりとした森の中で薬師とか、目指したいなぁ、なんて」
家の周りに薬草とか植えて、ガーデニングするのもいいね。
うん、のんびりと自分のやりたいことをして、二度目の人生も楽しんで、幸せになりたい!
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