第4話
真っ白い世界の中、気がついたら、私たちはのんびり座ってお茶しだしてた。
目の前のアルム様は、相変わらず、プンプンしている。
「本当に、ムカつくったらないわっ!」
アルム様が、私の前に紅茶の入ったティーカップを差し出す。
白いテーブルに白い華奢な椅子。
入院前のぽっちゃりしてた私だったら壊しちゃいそうとか思ったかもしれないけど、今の私は病気のおかげ(?)で、げっそりやつれてるから、そんな心配はいらない。
「それも、何、あれ。美佐江のこと、『皺皺の老女』とか言ってんのよ。勝手に呼び出したくせに」
「え、あれ、そんなこと言ってたの?」
「そうよぉ! 失礼しちゃうわよねぇ」
すっかり意気投合してる私とアルム様。
テーブルの上に載っているのは、いわゆるアフタヌーンティーのセット。
美味しそうなお菓子や小さなサンドイッチに、自然と目がいく。
「本当はね、隣の国の辺境伯のところの娘として生まれるはずだったのよ」
辺境伯という地位がどういうものかは想像できないけど、けっこうお偉い人なんだろう。
伯爵令嬢、とかいう響きに、昔見たアニメの意地悪なキャラクターが頭に浮かんだ。
所謂、お嬢様、と呼ばれる存在だろうか。
「まぁ……それは、残念だわ」
「そのせいで、あちらで生まれるはずだった娘は、魂が空っぽのまま。かわいそうに初めての子供だったのに流産になるでしょうね」
はぁ……と、切なげに溜息をつくアルム様。
うん、美しいね。
一方の私は、お気の毒に、と思いながらも紅茶に口を付ける。
自分の母親になったかもしれない人、というだけで、実際には何の接点もない。
申し訳ないけど、正直、それ以上の感慨も浮かばない。
「それはそうと。一度、こっちに召喚されてしまったから、残念ながら改めて転生はできないの。まぁ、こっちで死んでしまえば、この世界の輪廻転生の流れにのることになるけど、そうなると、召喚によって得られた能力は失われてしまうのよ」
「能力?」
「そう。この世界、美佐江の世界の中世くらいの文明レベルなんだけど、魔法が存在するわ。それと固有スキルというものもね」
「おお……まさかのファンタジー……」
小説としては好きで読んではいたものの、自分がそんな世界で生きることになるとは思いもしなかった。
魔法があるからには、魔物とかもいるし、なんとダンジョンなるものもあるらしい。
それを聞いてちょっとだけワクワクする。
「私って、どんな能力が」
「浄化」
「え?」
「召喚されるのって、いわゆる聖女、とか聖人とか呼ばれる人なのよ。で、美佐江は聖女として召喚されたんでしょうよ」
「……私が……聖女?」
こんなおばさんが? 聖女?
うそ~ん!?
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