第8章 おばちゃん、魔物と遭遇する

第62話

 私たちは、まだ店などが開いていないような時間に、隣国、オムダル王国の砦についてしまった。しかし、せっかくだからと、このままの勢いで先に進んでしまおうということになった。

 なんでもイザーク様曰く、私が目を閉じている間、私たちの集団が光りながら街道を走り続けていたと。まだ日ものぼりきらない時間。確実に目立ってたと思われる。それも相手側にはイザーク様たちだってわかって追いかけてきてた節がある。


「だからといって、ミーシャに直結するほど、想像力がたくましいとは思えないけどね」

「しかし、あのようにキラキラと輝くような魔法は見たことはございません」


 先程までとは打って変わり、のんびりと街道を進む、私たち。周囲は木々に囲まれてはいるものの、木漏れ日に溢れ、清々しい空気に満ちあふれている。森林浴、森林浴!

 不思議そうに言っているのはオズワルドさん。


「ああ、あれはきっとアルム神様の御業に違いない」

「えと、魔法とかでは、起きないのですか?」

「『身体強化』ということであれば、剣士などの戦闘を主にする者たちのスキルとして持っておる者もいる。私やオズワルドたちも同様だ。しかし、それは本人にのみ発動可能なだけで、馬や第三者へは不可能なのだ」


 そうなんだ、と思いながら、さりげなく、ナビゲーションを開いてみる。

 スキルを確認してみると、やっぱり私のスキルには『身体強化』なるものはない。まぁ、戦闘職じゃないから、当然か。

 そのままの流れで、魔法の一覧を見てみると、うん、なんか知らないのが色々出てくる。でも、ほとんど使ったことがないのは、攻撃魔法だからだと思う。なにせ、魔物とは遭遇することもないし、盗賊と出会ってもスリープでなんとかなっちゃったし。


「ん?」


 思わず、声が出てしまったのは……そう、見つけてしまったから。まさかの『身体強化』。光魔法の中の一つに、味方に対する補助魔法という形で載ってたよ。魔法の解説の端々にアルム様の過保護具合が溢れてる。


「どうかしたのか?」


 頭の上からイザーク様の声。これ、説明しといたほうがいいかなぁ。


「えーとですねぇ……私が使える魔法の中に、どうもあるっぽいです。『身体強化』」


 苦笑いしながら答えると、イザーク様、ポカンッとした顔で見下ろしてくる。イケメンのこういう顔は貴重だわ、と、心の中でごちそうさまと呟く。


「ど、どういうことだ?」

「光魔法の中にあるみたいです、『身体強化』」

「まさかっ」

「ええ?」


 三人ともになぜかビックリして、馬たちまで止まっちゃった。

 えー。もしかして、それって普通じゃないのかしら。

 固まった空気の中、強張った笑みを浮かべながら、イザーク様を見上げた私なのであった。 

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