第348話
そんな話を聞いた後、あのストーカーエルフを思い出した。
あれも王族の血をひいてるって話だったし。なので、トマスさんにあのストーカーエルフの話をしてみた。
「……ああ。あの方ですか」
訳知り顔にそう答えて言うには。
「あの方は、カイドンの町の領主の庶子の一人、ということになっているんです。しかし、裏では王族の落とし胤じゃないか、と言われています」
トマスさん曰く、なんでも、領主の妹が王家の後宮にあがっていたとかで、その関係じゃないか、という噂話があるそうだ。当然、純血主義の王家に上がるのだから、カイドンの領主もエルフ族なんだろう。
しかし、その妹というのも、だいぶ昔に若くして亡くなっているらしい。まぁ、長命なエルフだから、どれくらい前の話なのかは定かではない。実際、あのストーカーエルフ、若そうに見えても、百歳はとうに超えているだろうとのこと。
そして、各地の領主には、なんだかんだと、王家の血が入っている者も少なくないのだとか。ここ百年では降嫁した姫とかはいないらしいけど。
「まぁ、王家に限らず、厄介な種族なのは間違いないですね」
苦笑いするトマスさん。
一応、ライラさんが付けた教育係の人だから大丈夫かな、と思って、ストーカーエルフに目を付けられていた話をしてみたのだが、案の定、精霊の話は通っていたらしい。やはり、かなりライラさんに信用されている人なんだろう、と推測する。まぁ、跡取り息子の教育(という名の監視)を任せる人なんだし、当然といえば当然かもしれない。
……おかげで、観光地と言えるような所には立ち寄らない、ということになってしまった!
ちょうど今の時期、そういう地には必ず王族や高位貴族などが観光に来ているのだとか。精霊見えちゃう人、うようよしてる可能性があるってことだ。行けば確実に絡まれそうな予感がするので、行かないに限る。ということで、避けようという話になったのだ。
本来なら、行路の変更をしてくれたのだから、ありがたい、と思うべきなのだろう。
しかし! せっかくの来たのに観光らしい観光が出来ないなんて!
「時期を変えて、行けばいいさ」
「くぅ……イザーク兄様、絶対行きますからね」
「ああ。その代わり、事前に調べておかないとね」
とりあえず、お勧めスポット的なものを、トマスさんから聞き出しておかねば。
夏場でも雪が残る山々、銀色に輝く湖
世界樹と言われる大樹のある街
いくつもの古王国の遺跡……。
私は手製のメモ帳を片手に、休憩時間のたびに情報収集に勤しむのだけれど、話を聞けば聞くほど、行けないのが悔しい! と思うことになるのであった。
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