第102話
調べてみると、それぞれに四角い紙、それも上質な白い紙だったものの残骸が残っていた。ペンダントトップは嵌め込まれた石の下に、絵姿の裏に、鏡の背後に、大きさの異なった紙が、中央部分、恐らくそこに魔法陣みたいなものが描かれてたのかもしれないが、そこが丸く真っ黒こげになっていた。
紙の大きさで、呪いの力や意味は違ったのだろうか。彼女たちが、どこまでのことを狙っていたのかは、わからない。
それでも、人を呪わば穴二つ、っていうし。もしかして、解呪したら、相手側に返されていたりして、と、ちょっと悪いことを考えてしまう。
「これが、呪いの道具なのかしら」
「……」
「しかし……ミーシャ……君は凄いな」
パメラ様は不思議そうに穴の空いた紙をしげしげと見つめる。隣に立つニコラス様も同じ顔で紙を裏表を確認している。
そして、イザーク様の素直に感心する言葉に、照れてしまう。私と言うか、アルム様に与えられた能力のおかげだけど。
この騒ぎにも目を覚まさないジーナ様。三つも呪いを受けながら、この程度で済んでいるあたり、ジーナ様自体も生命力が強いのかもしれない。それなのに、なかなか床上げ出来なかったのは精神的なものが大きかった可能性があるのかも。
そして、少し青ざめていた顔に血の気が戻ってる気がする。
「治癒の魔法を使っても?」
「お願いできるか」
「もちろん」
ヘリオルド様は目を真っ赤にしながら頼んできた。当然、治しますよ。
アルム様が、どこまで考えていたかは知らないけれど、彼女を癒すために、ここを私の目標にした気がするから。
「ヒール」
ディスペルの時とは違う、柔らかくて温かい光がジーナ様を包み込む。
「……ふぅ」
ベッドに横たわるジーナ様は、すっかり病人のようではなく、ただ普通に眠っているだけにしか見えない。それでも、辛い思いをしただろうことは、私ですら想像がつく。
ベッドの中にいるジーナ様のお腹のあたりに手をあてる。
次はきちんと生まれてきますように。誰にも邪魔されず、この二人の元に、愛される子供が宿りますように。
あの黴臭い匂いは消え、薬臭い匂いが少し薄らいだ気がする。窓を開けて換気したせい、だけではないと思う。もしかしたら、あの黴臭さ、呪いの類の匂いなのかもしれない。
ちょっとだけ、魔力を使い過ぎたのか、少し疲れた。
「ミーシャ、お疲れ様。少し、休みましょう」
アリス様が優しく背中を撫でてくれる。
「アリス様……」
「後は、ヘリオルドに任せましょう。お邪魔虫はさっさと出て行きましょうね」
「母上……」
恥ずかしそうなヘリオルド様。
うん、このまま残ってたら、馬に蹴られるよね。
ジーナ様を見つめ続ける、幸せそうなヘリオルド様を残して、私たちは部屋を出た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます