第366話
なかなか迫力あるイザーク兄様に、私も若干、顔が引きつる。
「しゅ、主人は王城にこもりきりで、しばらく戻れませんわ」
その場から逃れようとしてるのか、ずるずると部屋の方へと後ずさっているけど、当然、結界に阻まれる。逃げ場はない。
「ロ、ロバート! ロバート!」
「ロバート、というのは、アレのことですかね?」
親指で背後を指すイザーク兄様。
――おう。
オズワルドさんに襟首をつかまれて、ブラブラとぶら下がっているのは、あの中年執事。血まみれでズタボロ状態。元の顔も、想像もできないくらいになっている。
二人とも、加減ってもんがあるでしょうに。
「きゃぁぁぁぁっ!」
とんでもないハイトーンで叫んだおばさんは、そのまま気を失ってしまった。
「……イザーク兄様、やりすぎでは」
「フンッ」
私もかなり怒っていたけれど、それ以上にイザーク兄様も、怒っていたようだ。私の前では怒った顔など見せないだけに、なかなかに新鮮ではある。私も怖いと思ったくらい。
おばさんと中年執事をひとまとめに縛り付けると、離れの目の前に転がしておく。多少汚れたっていいでしょ? そして部屋の結界を解いて、三人を中へと入れた。
一応、あのおばさんの名前が本当は『テレーザ・ボロドウ』となっていて、侯爵夫人ではないことを伝える。一応、お茶会から戻ったのだろうから、おつきの人もいたはず。それを聞くと、すでに兄様たちによって、捕らえられているらしい。
「う、う~んっ」
背後で、エドワルドお父様が目を覚ましたようだ。
と、同時に、とんでもない量の伝達の魔法陣による鳥たちが現れた。
「ちょ、ちょっと、これって」
「あ~、父上が意識を取り戻したから、一気に手紙が届きだしたのかも」
昔見た、鳥が襲ってくる映画のワンシーンを思い出してしまった。
「な、なんじゃこりゃぁぁぁっ!」
どこにそんなパワーが残っていたのか。エドワルドお父様の叫び声が聞こえる。手紙が一気に床に落ちて、お父様がアワアワしていると。
「ん、む~、うるさい、エドワルド」
「ア、アリスっ!」
アリス母様も目が覚めたらしい。エドワルドお父様が、突然、ウォンウォン泣きながら抱きしめてる。二人はまったく私たちに気付いていない模様。
「もうっ、エドワルド、ウザイッ」
「アリス、アリスゥ!」
エドワルドお父様の暴走が止まらないので。
「もう、『スリープ』!」
「あ、はぁ~~~」
せっかく起きたのに、また眠らせてしまった。だって、お父様、うるさいんだもの。
バタンキューって、こういうのを言うんだろう。アリス母様に思い切り倒れかかってしまった。
「お、重いぃぃぃっ」
……うん、ごめんなさい。
結局、イザーク兄様たちが、なんとかアリス母様の身体を助け出してくれた。
よかった、よかった。
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