エピローグ
エピローグ
オムダル王国のごたごたから逃げてきて一か月。
噂では、王太子の婚約者であった『偽聖女』が病気で亡くなったとのことで、白紙に戻ったとか。改めてロンダリウス侯爵のご令嬢が話題に上がっているらしい。しかし、彼女が病気(本当は呪い)になる前から、『偽聖女』との噂があった王太子と再び、なんていうのは、ロンダリウス侯爵が許さない気がする。
私は、のんびりとリンドベル領で田舎暮らしだったり、薬師の仕事だったりを楽しんでいる。時々、リンドベル家に行っては、可愛い弟分、アルフレッドに会いに行ったりする。ヘリオルド兄様やジーナ姉様も、私の顔を見るだけで、幸せそうな顔をしてくれるし、私も幸せな気分になる。
私が魔の森近くにいるせいか、小型の魔物も現れなくなったので、リンドベル領での冒険者の仕事があぶれている、なんていうマイナスな話題もあるものの、周辺の村や町での被害が減っているようなので、よしとする。
森の奥地に行けば強いのもいるのだ。頑張って討伐してくれ、と願う。
そして、双子は相変わらず私をダンジョンに連れて行こうとする。
まだ、最難関を攻略できないらしく、癒し担当で連れていきたいらしい。私じゃなくて、エドワルドお父様たちと行けばいいのに、って思うけど、そこは親子としての何やらがあるらしい。まったく、お子様め。
大体、誰が、あんな疲れるところに行くものか。
素材の採取以外でなんで入りたいのか、理解に苦しむ。
そういえば冒険者ギルド経由で、隣の大陸の港町にいた絵描きのおじいさんが、魔物図鑑を作ったという話を聞いた。現物はこちらにはないようなんで、早いところ受け取りたいと思うのだが、如何せん、あのストーカーエルフがいるかもと思うと、面倒だな、と思ったり。
でも、いつか、万全のタイミングを狙って、ちゃんとあの大陸を巡ってみたいとは思う。
* * * * *
今日も、いい天気に恵まれている森の家。私はリビングダイニングの窓を開け放ち、外へと目を向ける。
「ミーシャ、これだけ採れればいいかな」
目の前の薬草畑で、輝くような笑みで薬草を掲げるイザーク兄様。
美しい顔には、見事に泥がついている。貴族のご令嬢たちが見たら卒倒しそうなのに、残念王子だ。
「ありがとう……ついでに、あの木の実もお願いできる?」
「任せて」
嬉々として、私のお願いを聞いてくれるイザーク兄様に、私は力ない笑みを浮かべてしまう。
この人は、本気でここにいつくつもりだろうか。
「これぐらいでいいかい?」
まぁ、悪い人ではない。むしろ……。
「はい、それくらいで。今、行きます」
私はイザーク兄様が採ってくれた薬草の入った籠を受け取るために、部屋を出た。
二度目の人生、こんな長閑な生活も悪くない、と思いながら。
***
お読みいただき、ありがとうございます。
一旦、ここまでで話を一区切りとさせていただきます。
できれば、少し時間をおいてにはなりますが、後日談(ケダモノやちびっ子エルフ絡み。悪い人も少し復活させたい)などを書けたらとは思っております。(特に、エルフの国の話は、まだまだ書きたいことが浮かんではいるので)
また、リクエストなどもいただいておりましたので、それも書ければいいな、とも思っております。
※続編始めました(2022/05/01)
おばちゃん(?)聖女、我が道を行く ~まだまだ異世界、満喫中!~
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