第263話

 船長が少し困ったような顔をしながら、言い出した。


「それで、実は今回の報酬の件なのですが……」


 ……まぁね。

 双子はA級だし、大活躍していたようだし、船も(精霊王様が)曳航してくれてくれてるわけだし。それなりの報酬を求められるだろうと、思ってるのだろう。


「そうねぇ……」

「どうしようか」


 二人も少し困ってる。だって、どう考えても、脳筋二人にしてみれば、単なる暇つぶしだ。お金はあっても困らないけど、船会社の方が困るのかもしれない。

 私はちょっと思いついたので、ニコラス兄様の耳元でこそっと聞いてみた。


『この船って、予定よりも早く着くのかな』

「うん? そうだね。だいぶ早いかも……船長、この船は予定よりもだいぶ早く着きそうですか?」

「あ、はい。通常ですと余裕を持って一週間程度と見ておりますが、今回は明日早い時間には群島内の港に入るかと」


 だいぶ早いじゃないの。明日着くとして正味四日。絶対、精霊王様たち、何かしたでしょ。


『きっと海賊の討伐の精算って、その島でやるんだよね? それに時間がかかるだろうから、しばらく船は出せなかったりするんじゃない? その間に、色々と買い物とか、観光とか……』


 私の意図に気付いたのか、ニコラス兄様は


「……なるほど。船長、討伐の精算はその港で行われるのかな」

「そうなりますね……その間は、しばらく港に留め置かれる可能性はあるかと……」

「であれば、その間、我々は島の方の宿にでも泊まることにします。その間にかかった費用などを、そちらで負担していただく、というのではどうでしょう?」

「ええ? そ、その程度でよろしいので?」


 チラッと私の方を見る船長。私の意見がニコラス兄様に影響があると気付いた模様。ならば、と私の方から聞いてみる。


「あと、もし、港の方の処理が早めに済んだとしても、少なくとも一泊はさせてもらうというのはどうですか」

「大丈夫です。航海の予定が遅れない限り、問題ありません」


 私の言葉に、船長は力強く頷く。これで、支払い関係のことは終了。海賊の討伐報酬がいくらぐらいになるのか、やつらが貯め込んでいるお宝はどうなっているのか、それは、これからのお楽しみ、ということだろう。


 ……フフフ。ヨレウ群島は、南の島。南の島と言えば、輝く太陽に、青い空、白い砂浜に、青い海。キャッキャウフフと、浜辺を走る姿。頭の中では、ハワイアンな音楽が流れてる。そんな音楽はないだろうけど。

 本来なら、単なる経由地で、上陸する予定もなかった土地だけに、ちょっとばかり、ラッキー。

 あちらでだって、若い頃にハワイに行ったくらい。ちょっとだけ、南国気分が味わえるんじゃないかと、期待が膨らむのであった。

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