第73話
ギルドを出る前に、討伐クエストのクリア登録をしてもらった。私の手元にあるギルドカードは、ランクの文字がEに変わっている。ちょっとだけ、ランクがあがるってことが嬉しい。口元がもにゅもにゅしてしまう。
ギルドの前に乗り捨ててたはずの馬が大人しく待ってたのを回収して、エイミーさんに教えてもらった宿屋へ向かった。
話がすでに通っていたのか、すぐに部屋に案内された。ギルドでイザーク様が私を身内って紹介してくれたお陰なのか、ちゃんと私の部屋も用意してくれて助かった。色々気を遣うことがないほうが、気が楽だもの。部屋に荷物を置いたら、イザーク様の部屋に集まることになった。
ノックをして部屋に入ってみると、すでにオズワルドさんたちも集まっていた。窓際に立っていたイザーク様の手には、手紙みたいなのがあった。誰かから連絡が来たのだろうか。表情が少し和らいで見える。
「何かありました?」
「ああ、父上から伝達の鳥が届いてね」
オズワルドさんがソファに私を案内してくれて、その間にカークさんはお茶まで淹れてくれた。連携が素晴らしいね。
「どうも、父上たちはオクトに来ているらしい。弟たちも今はオムダルの王都にいたらしいが、連絡を取り合ったみたいでオクトで落ち合うつもりらしい」
「確か、皆さん、冒険者なんですっけ」
「ああ、父上と母上はAランク。オズワルド、弟たちはBランクだったか」
「まもなくAランクになられると聞いておりますが」
「そうなのか?」
「ええ、先日お会いした時に、もう追い抜かれますね、なんていう話をしました」
オズワルドさんが、なんだか嬉しそうに話す。
「そうか。まぁ、オズワルドはニコラスたちの師匠みたいなもんだったしな」
「いえいえ、もう、追い越されますから、師匠だなんて言えませんよ」
そう言いながらも満更ではない顔。うん、教え子の成長って、嬉しいもんだよね。
「父上たち四人が討伐隊に加わってくれるなら、だいぶ楽になるとは思うんだが」
「間に合いますかね?」
イザーク様のご両親はオクトの街にいるというのなら、馬で三日くらいでつくかもしれないけど、弟さんたちはどうだろう。
「どうだろうな。ギルドとしては戦力が上がるなら助かるかもしれんが、そんな時間的余裕があるかどうか」
今になって思い出す。
あの時、まだかなりの数がまだ残っていたはずだった。それが大人しく帰っていったのは、指示を出しているボス的な存在がいたはずだ。それに、今以上にオークたちが増えて、町を襲ったりしないだろうか。
勝手にそんなことを想像して、背筋が寒くなった。
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