第72話
バタバタとギルドの中が慌ただしい。さっきのオークに関する情報が開示されたからだ。私たちはすでに応接室から解体窓口へとやってきて、山ほどの氷漬けオークを積み上げてしまった。これ、自然解凍またないとダメなヤツかも。
一緒に来てくれたエイミーさんと、受け付けてくれたおじさんたちは、口をあんぐりとあけて固まってる。
「い、一応、数えたところ三十二体ございました。こちら、全て買取でよろしいでしょうか」
「ああ……そうだな……その前に。通常のオークの討伐クエストはあるよな。オズワルド、ミーシャとパーティ登録して受けてこい。ミーシャ、ギルドカード」
「はっ」
「え?」
二人の会話についていけてない私。それでも指示された通りにギルドカードを手渡すと、オズワルドさんはすぐに離れてく。
どういうこと? と思っている私に、イザーク様は笑みを浮かべながら説明してくれた。
「オークの討伐はCランク以上推奨なんだ。だから、Gランクのミーシャだと受けられない。しかし、オズワルドとカークは、ああ見えてBランクなんだ。彼らとパーティを組んだ形にすれば、ミーシャも討伐実績をつけてもらえるんだ。せっかくの機会だからね。実績とともに報奨金も貰ってもいいだろう」
「おお、そ、そうなんですね……あれ? イザーク様は?」
「私は残念ながら冒険者登録はしていないんだ。近衛騎士団に所属している者は、冒険者登録してはならない規則になっててね」
「ほえぇぇぇ」
そういうもんなのか、と感心しているうちに、オズワルドさんが戻って来た。早い。
「リンドベル様、それでは」
「ああ、全て買取で構わない。同時に討伐クエストもクリアで構わないな」
「はいっ」
イザーク様に念押しされたエイミーさんは、カクカクと頷く。
「たぶん、これでミーシャ様はEランクまで自動的に上がることになるかと」
「おおう……それは、なんというか」
特別ランクを上げたいとかいうのはなかったんだけど。まぁ、低すぎても舐められるか。
結局、オークは自然解凍待ち、ということになって、解体後に精算という形をとることになった。
「た、たぶん、明日には報奨金をお渡しできるかと」
「わかった。オクトの方とは連絡ついたのか」
「は、はい。今、諸々調整中のようでして……」
困ったような顔で対応するエイミーさん。中間管理職みたいで、少しばかり可哀相な気もする。
「わかった……それでは詳細が決まり次第教えてもらえるか。さすがに、あの状態で放り出しては行けぬ。ついでに、できれば近くの宿屋を紹介してもらえると助かるんだが」
「はいっ!」
エイミーさんは大きな声で返事をすると、背筋をピンと伸ばして飛び出してった。
「……あんまり苛めないであげてくださいね」
ぽそりと言うと、イザーク様はなんとも人の悪そうな顔で笑みを浮かべるだけだった。
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