第126話
とりあえず、一度はシャトルワース側と会って、はっきりと断るぞ、という私の意思に基づき、再び、別の部屋へ移動。こじんまりとしてはいるけど、ここも国王様が謁見をする場としても使っているのだろうか。一段高い所に、立派な玉座っぽい椅子が置かれている。
その部屋には外交官らしき人が一人、魔法使いみたいにローブを着た人が一人にメイドのような人が一人、合計三人が顔を強張らせながら立って待っていた。
「待たせたな」
「はっ、いえ、それほどではございません」
「そうか」
国王様、気合入ってます。なんか威圧感半端ない感じ。
一方の外交官。細面の苦労性な顔の四十代くらいだろうか。暑くもないのに、汗をハンカチで拭ってる姿は、すでにお気の毒な感じに見えてしまう。よっぽど本国から言われていることでもあるんだろうか。
ローブを着た魔法使いみたいな男性は無表情ながら、視線は私に固定。何、何、もしかして鑑定とかされちゃってる? 一応、ヘリオルド兄様から、鑑定を防ぐ腕輪を頂いてるので、そんじょそこらの鑑定レベルじゃ、わからないんだって。そのせいなのか、魔法使いさん、だんだんと焦った顔になっている。ちょっといい気味って思っちゃう。
そしてなぜだか、地図情報立上りました~。その赤い点は誰かっていうと……なぜかメイドさん。十代後半くらいだろうか。そこそこ可愛らしい顔をしてるけど、この世界で言うなら十人並み、といったところだろうか。美形、多いからねぇ。どこかで会ったことでもあるんだろうか。実際、なぜだか睨まれてる。こういう場では感情は抑えるもんでしょうに。
私は彼女を無視して、国王様の後をついていく。
「さて……シャトルワース王国、外交官、エンゲルス男爵、話を聞こうじゃないか」
「はっ、皆様、お忙しい中、お時間をいただきありがとうございます」
青白い顔をしながら、エンゲルス男爵は言葉を続ける。
「早速ですが、こ、こちらの聖女様ですが、本来、我が国で聖女様としてお力を発揮いただくはずでした」
何度も何度も汗をふくエンゲルス男爵。そのうちハンカチ絞ったら、水滴が落ちるんじゃない?
「えー、それが、なぜかこちらの国にいらしておりまして……我が国としては、急ぎお戻り頂きたく」
「……なぜ?」
「は?」
私は心底不思議に思いながら、問いかける。
「私、貴方のことを存じ上げません。そもそも、なぜ、私がシャトルワース王国に行く必要がございますの?」
「あ、いや、貴方様はシャトルワース王国ご出身でございましょう?」
「いいえ」
シャトルワース王国に呼ばれはしても生まれも育ちも、しっかり日本ですから。
「う、嘘よっ!」
いきなり叫んだのは、なぜか赤い点になっていたメイド。
ちょっと、こんな場でただのメイドが声をあげちゃ駄目でしょうが。
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