第125話
部屋の空気がちょっと重くなっちゃったな、と思っていた所に、別の衛兵の人が現れ、国王様たちがお呼びとのことで、部屋を出ることになった。
連れていかれたのは、先程の謁見をした広間ではなく、もう少し小さめな会議室といったところだろうか。中にいたのは、国王様と宰相さん、他にも数人の貴族たち。その中には、当然、ヘリオルド兄様も含まれてる。あの公爵は含まれてないのは、役職とかが関係してるのだろうか。
「おお、聖女様、先程は失礼した」
テーブルの先頭、お誕生日席に座ってたのに、わざわざ立上って出迎えてくれた国王様。謁見の時に見せた支配者のオーラはどこへやら、気安い感じのイケおじ王様に、ちょっとびっくり。
「いえ……色々とあるのでしょうから」
「ご理解いただき感謝する。それに、あの呪いの件もだ。あの枢機卿も『素晴らしい!』と興奮してたぞ。普段落ち着いている方だけに、あの反応は見ものであったな」
周囲の貴族たちも、その姿を思い出したのか、笑みを浮かべている。
国王様に背中を押されながら、私は引かれた椅子に腰かける。イザーク兄様は私の背後を守るように立っている。こうして背後に立たれると、安心するのを実感する。
国王様は自分の席へと戻ると、本題となる話をしだした。そう、シャトルワースの件だ。
さきほどの謁見の場にも、一応、外交官が来ていたらしい。しかし、あんなことになったのもあり、あの場でのシャトルワースとの話は優先順位は下がってしまったそうだ。
「それでも、シャトルワース側がなかなかにしつこくてなぁ」
困った顔でそういう国王様。隣に立つ宰相もうんうんと頷いている。まぁ、目の前で聖女の力を見たら、余計にそうなるかもしれない。
「あの、ここにいらっしゃる方々は、詳しいことはご存じなので?」
あの場では私の聖女としての力を先に確認させられただけで、どうやってこの国にやってきたのかには触れてなかった気がする。聞いてみると、シャトルワースから逃げてきた、イザーク兄様が保護したということくらいらしい。
どこまで触れていいものか判断はつかないけど、ここにはいきなり地図情報が開くほどの真っ赤な人はいないみたいなので、シャトルワースによって、いきなり召喚されてしまったことを話した。
「なるほど……それで奴らは、聖女様を自国に取り戻したいということか」
「最近はこれといって魔物による大きなトラブルもないと聞いているが」
「考えられるのは、王位継承権絡みだろうか」
「ああ、あそこの第二王子か」
苦々しい顔をしているおじさま達。なんか、今、不穏な話が出ていません?
曰く、第二王子というのは側妃の一人、カシウル公爵の娘を母に持つらしく、なかなかに傍若無人なタイプらしい。召喚された時にいたキラキラしい人がそれなのだろう。
同い年の第一王子(こちらの母親は隣国のエシトニア王国の第二王女)に激しくライバル心を燃やしているらしい。同い年ってだけでも男の子同士、ぶつかり合うだろうしね。
国内外で、能力的にも第一王子が次期王太子と目されているだけに、焦ってやらかした可能性も否定できないとのこと。
「聖女を召喚したからって、王太子になれるものなんですか?」
素朴な疑問を問いかける。
答えてくれたのはモノクルをかけた宰相さん。なんか、困ったような顔してる。
「いえ、そんなことはありません。ありませんが……どこの国にもあるおとぎ話で、聖女様と結婚して国王になった、というものがありまして……」
「……えぇぇぇ?」
まさかの、おとぎ話が出てくるとは、おばちゃん、思いもしなかったよ……。
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