第294話
ずいぶんと長い階段を降り切った所は、洞窟のように周囲を岩に囲まれた大きな部屋のようだった。それも最悪なことに、スケルトンの集団が待ち構えていた。
「……モンスターハウスだわ」
パメラ姉様のうんざりしたような声。
ギュウギュウ詰めの状態で、こちらが来るのを待っている。なぜか部屋から出ることなく階段の方へもやってこないのは、ダンジョンの特性なのだろうか。
しかし、あの状態の中に入るのなんか無理だ。というか嫌だ。
「くそっ、豚野郎、わかってて俺たちを先に行かせたな」
ヘリウスが忌々し気に階段の上の方を睨みつける。
「どういうこと?」
「たぶん、斥候にでも先に確認させたんだろ。この状態がわかってたから、露払いに俺たちを行かせたんだ。そうすりゃ、少しは自分たちの被害が抑えられるだろうからな」
「そんな。私の力なんか知らないでしょ」
「お前の力など関係ない。そもそも、この階層にくるようなレベルの連中が、スケルトン程度でやられるわけがない。ただ、数の暴力には敵わないかもしれないがな」
「だったら、こんな少数の私たちだって」
「双子の美貌の冒険者ってだけでも、Aランク冒険者のリンドベル姉弟は有名だ。俺を含めAランクが三人もいるんだぞ。それも一人は精霊魔法で有名なニコラスだ。それくらい見越しているだろうよ、あの豚野郎ならな」
……よっぽど嫌いなんだな。ゴンドーのこと。まぁ、嫌いになる気持ちもわからないではない。あのオークな姿を思い出して、私も顔を顰める。
「それに、あいつらの仲間らしいのが一人ついてきている」
耳をピクピクとさせているヘリウス。苛立ちは隠せない。
『こ奴の言っていることは正しい』
火の精霊王様がミニチュアサイズで現れた。彼もなんだか不機嫌だ。
「少し離れてはいるが、人族の臭いだな。獣人には流石に任せられなかったんだろ」
確かに、階段に向かう途中での獣人たちの反応は、比較的ヘリウスに好意的だった。そんな獣人たちにヘリウスを偵察してこいというのは、ゴンドーにしてみればリスクがあるかもしれない。
「……ねぇ、ヘリウス」
「なんだ」
「さっきの威圧、上にいる人に向けることできる?」
「……ああ、できるとも」
ニヤリと悪そうな顔をすると、階段の上の方を向くと、フンッと鼻で笑った。私も見上げるけど、真っ暗で何も見えない。階上からの光も見えないくらいに離れているということだ。
その後、すぐ、ズンッと周囲の空気が重くなった気がした。すると、遠くでドタドタドタッと何かが倒れた音が聞こえた。さすがに、ここまでは落ちてこない模様。
「もう、いない?」
『階段にはいないな』
「じゃぁ、いいかな」
私はここで結界を張った。当然、消音の設定してるから、これから起こる音は聞こえないはずだ。私はモンスターハウスとなっている部屋へと目を向ける。うじゃうじゃいるスケルトン。もう、気持ち悪いなぁ……。
「『浄化』!」
UGYOOOOO!
HYAAAAAAA!
耳障りな甲高い叫び声とともに、スケルトンたちがどんどん消えていく。後には、広い部屋中に、大量の魔石だけが残っていた。
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