第191話
聖女認定で慌ただしくした日から、一週間ほど経った。当然、認定は終わったんだから、さっさと私たちは引き上げた。王都にいたらいたで、『聖女認定』の噂から、あちこちから社交的なお誘いがひっきりなしになるのは目に見えていたから。
教会からは国王様にその日のうちに正式に報告があがったらしい。といっても、『聖女認定』が滞りなく終わったこと、私が教会に認められた聖女である、という報告だったそうだ。
色々あったことは、教会内部だけでの話にするつもりだそうで、ノートンさんが、というよりも、エンディメン枢機卿の思惑も多少はあるのかもしれない。
案の定、報告のあった当日に、王都の屋敷に国王様から謁見の話が届いたらしいんだけど、すでに私たちは帰っちゃってました。後で国王様から、なんで帰っちゃったんだよぉ、的なお手紙がエドワルドお父様の所には届いたそうだ。
無事に領都に戻った私たち。いつものようにのんびりと領にある屋敷のサロンでパメラ姉様とお茶をしている時に、セバスチャンさんが静かにシルバーの小さなトレーに手紙を持って現れた。今度は、第三王子から救援要請の手紙がパメラ姉様のところに届いたようだ。
「なんか、正式に帝国側から婚約の打診が来たみたい……相手はやっぱり、偽聖女だって」
「えぇぇ……さっさと気になってる子に告白して婚約しちゃえばよかったのに……それって、断れない話なんですか?」
第三王子も、相手の方がダメでも、OKでも、気持ちがはっきりすれば次に進めると思うんだが……まぁ、偽聖女相手じゃ嫌かもしれないけど。
「本人は断るつもりらしいけど、断る理由に……やっぱり、ミーシャを使わせて欲しいみたいよ?」
「っんぐ!?」
紅茶を口に含んでる瞬間に言うことではないでしょ!?
「いや、なんで私? それはなかった話になったんでは?」
「あ、うん、ミーシャを婚約者に、っていう話ではなく、『聖女に認められた女性でなければ嫌だ』という話にしたいみたい」
「……それって、偽聖女は自分が自分を認めてる、とか言いそうじゃ」
「いや、ちゃんと教会本部に認められた聖女に、というのにしたいんだって」
……教会が聖女認定したのを見計らって、即手紙を書いたってことだろうか。
「そもそも聖女に認められた、ってどうやって認めろと言うんだろう。すでに候補とかいるんでしょうか」
「まぁ、この話を持ってくる時点で、候補くらいいるでしょうね……でも、この手紙の中では触れてないかな」
「でも、第三王子の手紙だけでは、王都に行くわけにもいかないですよねぇ?」
「そのうち、国から正式文書が届くんじゃ……」
そうパメラ姉様が言い切る前に、サロンの外が騒がしくなる。
「……やっぱり来たわね」
「うん?」
私は姉様の呆れたような言葉とともに、ドアの方を見る。そして、勢いよく開いたかと思ったら。
「ミーシャ! 元気だったか!?」
……一週間前にも会った、イザーク兄様が満面の笑みで部屋に入ってきた。その手には、何やら立派な封筒を持って。
うん、やっぱりなって思うよね。ちょっとだけ、遠い目になったのは、許して欲しい。
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