第11章 おばちゃん、初めて聖女らしい仕事をする
第95話
お城、といっても、王都にあったような煌びやかなものとは違って、武骨な感じ。まさに戦のためにつくられた、という感じで、『質実剛健』という言葉がよく似合う。魔の森の近くにあり、シャトルワース王国との国境を挟んだところにある場所だけに、そういったものになるのも当たり前かもしれない。
どんどんと進んでいく皆の後について歩きながら、キョロキョロと周りを見回す。通りすがるメイドさんや衛兵さんは、ピシッと止まっては会釈をするを繰り返す。ちゃんと教育されてるのねぇ、と感心してしまう。
案内された部屋のドアを開けると、温かみのある色合いのリビング。その奥に寝室があるらしく、ヘリオルド様は躊躇なくドアを開けた。その途端、少し薬臭い匂いが漂ってくる。
「ジーナ……ジーナ」
ヘリオルド様は、声を抑えながらも、眠っている女性、恐らく、奥様を起こそうとしている。
部屋に入ってみると、カーテンの開いた窓から、夕陽のオレンジ色の光が差し込み、ベッドに横たわっている女性を照らしていた。波打つ金髪が夕陽に反射してキラリと光る。しかし、彫りの深い美しい寝顔が、窶れて見える。ずいぶんと深く眠っているのか、軽い寝息をたてたまま、起きる気配がない。
エドワルド様の話では、だいぶ元気になっていた、ということだったけれど、今、目の前で横たわってる姿では、全然「元気」には見えない。
産後二、三週間くらいは身体を休めた方がいいというのは聞いたことはある。しかし、すでに一カ月は過ぎている。所謂、産後の肥立ちが悪いのだろうか。
それとも、私のことを不安に思いながら待つのがストレスだったのか。そうだったらと思ったら、少し申し訳ない気持ちになる。
「ヘリオルド様、どうか、そのまま」
「しかし」
無理に起こそうとしているヘリオルド様を諫める。悔しそうな顔をするヘリオルド様。うーん、美人はどんな顔をしても美しい。
いやいや、そうではなくて。
「ヘリオルド、何やら、ジーナは、前に会った時よりも窶れてはいないか?」
不審そうに聞いたのはエドワルド様。その言葉に、やっぱり、と思う。
「はい……父上達が城をたった時は、だいぶよかったのです。ベッドから起き上がり、部屋の中をゆっくりと歩き回るくらいにまで回復していたのですが。この子が城へ向かっていると知って、どれだけ喜んでいたことか……」
「あの、いつごろからこの状態に?」
「そうだな……義理の妹たちが見舞いに来た夜からだろうか。あれは確か、一週間ほど前だったか。本人ははしゃぎすぎたようだと言ってたんだが」
心配そうな顔でジーナ様を見つめるヘリオルド様。
「ジーナは君に……ミーシャに会うのを、それはそれは楽しみにしていたんだよ」
泣きそうな顔でそう話すヘリオルド様。
私は、皆に背中を押されて、自然とジーナ様のベッドの脇へと進んでいた。
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