第28章 おばちゃん、悪い人とニアミスする

第355話

 久々にリンドベル家に戻ると、上を下への大騒ぎになった。

 いや、さすがに、そこまで騒がなくても、と、こっちが引くくらい。歓迎されているのはわかるだけに、苦笑いが浮かんだのは仕方がないと思う。

 その大騒ぎのメンバーには、エドワルドお父様やアリス母様、双子の姿はない。それぞれ、ギルドの依頼のために国外に出ていたり、まだダンジョンから戻ってきていないそうだ。

 さすが、『冒険者』である。


 屋敷に戻ってから三日目。

 のんびりとサロンでジーナお姉さまと、生まれて半年を過ぎた長男のアルフレッドとともに、ティータイムを楽しんでいた。当然、アルフレッドは飲めない。かなり大き目なベビーベッドの中である。

 目の前のジーナ姉様は、ティーカップを手にしながら満面の笑みを浮かべている。一児の母とは思えないくらい、相変わらずの若々しさとともに輝かしいばかりの美しさ。眼福。眼福。


「フフフ、何を見ているのかしら」

「ん~、ジーナ姉様は、キレイだなぁと思いまして」

「あら、ミーシャは、少しだけ背が伸びたかしら?」


 むふ。久しぶりに会った人にそう言われると、ちょっと嬉しい。

 実際、少しだけ背が伸びていたのだ。屋敷に置いてあったドレスの丈が、少しばかり短くなっていた。私としては、まったくの許容範囲の丈だったのだが、それに気付いたメイドさんたちが大騒ぎになった。

 結局、慌てて、新しいドレスを用意してもらうはめになった。


「それでも、こちらの同い年くらいの子と比べると小さいのよねぇ」


 思わず、ため息が出る。

 なにせ、メイドさんの中の新しく入ってきた見習いの子(十歳だそうだ)、明らかに私よりもデカいのだ。絶対、おかしい。


「いいじゃない、まだこれから伸びるかもしれないじゃない」


 ジーナ姉さまはほのぼのとした雰囲気でそうおっしゃいますが。なんとなく、伸びてもあと数センチな気がする。あっちの世界では平均身長だったんだけどなぁ。


「あぶぅ」

「はいはい、なんですか~」


 ベビーベッドの中から、小さな手が空に伸びる。

 ご機嫌のアルフレッドは、髪の色はヘリオルド兄様と同じ茶色なのだけれど、まだ薄いせいか金色にも見える。くりくりした目はジーナ姉様そっくりの真っ青。まるでイザーク兄様が赤ん坊だったら、こんなんじゃないか、というくらい。

 ぽよぽよの頬が可愛すぎるアルフレッド。よだれ垂れまくりでも、かわいいから許す。


 そばに寄って指を差し出せば、ぷにぷにの手が掴んで離さない。

 まったく、かわいいな。

 ご機嫌の笑みを向けられて、私の方だってでれっとなってしまう。


「こら、アルフレッド、ミーシャは駄目だ」


 いつの間にかサロンに入ってきた、イザーク兄様の大人げない発言。その上、優しくアルフレッドの指を私の指から外していくと、「あー! あー! ああああっ!」とアルフレッドが文句を言うみたいに泣き出した。


「ちょっと、イザーク兄様」

「もう、イザークってば」


 私たちの注意にもニッコリ笑うだけで、私の手をハンカチで拭うイザーク兄様。まぁ、よだれでベタベタだったから、ありがたいのではあるが。


 ……兄様、ほんと、大人げないですよ。


***


 章タイトルなんですが、ちょっとまだしっくりこないので、途中で修正するかもしれません。^^;

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