第12章 おばちゃん、王都に行く
第103話
リンドベル領に着いて、三日が経った。
初日こそ、ドタバタとしたけれど、翌日にはジーナ様は目を覚まし、三日目の今朝は、皆と一緒に朝食すらとることが出来ている。
それにしても、この世界の呪いってもんは恐ろしいもんだ。
イザーク様は、私を無事に送り届けたということと、長く王都を空けていたこともあって、翌日には旅立ってしまった。正確には、城内にある転移陣を使って、オズワルドさんたちに引きずられていってしまった。
この転移陣、王都にあるお屋敷とだけ往復できるらしく、これも魔の森を正面に防衛する場所だからなのか、王家にも了解をいただいているらしい。他の貴族たちとの兼ね合いとか、大丈夫なのか、とちょっとだけ気になったけど、それだけ力のある家ってことなんだろうな、と勝手に想像している。
そして、これだったら、いつでも王都に行けるじゃん、と思ったら、ちょっと肩の力が抜けた。そのうち王都に行かなきゃいけないってなった時、また、あんな風に時間をかけていくのは、疲れそうって、思ってしまったのだ。ワイバーンを使って飛んでいけば、少しは早いかもしれないけど、それでも、電車や飛行機の早さや便利さ、安全性を考えたら……ねぇ?
昨日は、ジーナ様が寝ている間に、アリス様とパメラ様につかまって、街にある衣料品の店に連れていかれて、着せ替え人形と化していた。なにせ、着替えらしいものがまったくなかったってことに、今さら気付いた二人に「なんで早く言わなかったのっ!」と叱られてしまったのだ。
いや、それ言う所なかったよね、と私は言いたかったが、彼女たちに何を言っても言い負かされそうだったから、我慢した。別にパメラ様のお古があれば、それでもよかったんだけどなぁ。
普通、お貴族様っていうのは、商人とかをお城とかに呼びつけて、オーダーメイドで作るものだと思っていたが、彼女たちのような冒険者をやってると、そういうのにこだわりはないそうだ。実際、昨日買ってもらった服も、日常に着られるような、シンプルなものばかり。ただし。
「王都に行ったりして、社交の場では着られないから、それはそれで用意するわよ」
「そうよ。聖女様になんて格好させてるのか、と、私たちが侮られるからね」
「は、はいっ」
二人の気合の入れように、顔を引きつらせて返事をするしかなかったのは、言うまでもない。
「ミーシャ、食事が終わったら、お話をしたいの。いいかしら」
朝食を味わいながら、昨日のこととか色々考えてた私に、そう声をかけてきたのは、ジーナ様。顔色も戻って、恥ずかしそうな笑顔が、可愛らしい。
「……んぐ。は、はい」
食べている途中だったので、慌てて飲み込んで返事をする。
昨日は、侍医に一日様子を見るように、と言われて大人しくベッドにいたジーナ様。今朝は私の癒しのせいで、元気がありあまってるみたい。そんなジーナ様を、みんなが優しい眼差しで見ている。
特にヘリオルド様の眼差しが激甘で、胸やけしそうなくらい。まぁ、最愛の人の元気な姿なんだから、仕方がないのかもしれないが……エドワルド様もアリス様に激甘だから、遺伝的なものなのかも。
イザーク様とニコラス様? まだそういう女性に対しての姿を見てないから、ちょっと予想がつかないけど……父親に似たら、そうなる可能性はあるな。うん。
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