第104話
私の言葉に、不安そうな顔になったのはジーナ様。
「ミーシャが王都に?」
「ああ、そうなんだ。彼女は召喚された聖女だからね。イザークからすでに王都に、というか、正確にはヴィクトル王子経由で連絡がいってしまっているはずだ。このまま、私たちの元に、という訳にもいくまい」
「……そうなんですの」
何か言いたそうなジーナ様だが、無理矢理に飲み込んだようだ。
なんとなく、予想はつく。自分の娘として、とか、そういうことなんだろう。だが、身体は子供でも、中身はおばちゃんだからなぁ。こんな若くて綺麗な両親ってのには抵抗がある。それに。
「ジーナ様、大丈夫。貴女は、もう一度、ちゃんと赤ちゃんを授かることができるわ」
アルム様から授けられた力で私が癒したのだ。妊娠しづらかった原因まではわからないけれど、もう身体は大丈夫なはずだ。
「でも、ずっと授からなかったのよ……今回は、ようやくと思っていたのに」
「ジーナ……」
悲し気なジーナ様の肩を抱きしめるヘリオルド様。
う、美しい……って感動してる場合ではなくて。私は、一度、おばちゃんモードに切り替えることにした。そう、あの紺のスーツのおばちゃんだ。だって、子供に妊娠関連の話をされても、納得感がないかなって。私の変化を初めて見たジーナ様は、大きな目をより一層大きくして驚いていた。
妊娠しやすい周期というのがあることと、ストレス……心理的圧迫はよくないこと、十分な睡眠が必要なこと、食事の栄養も大切で、軽い運動も必要だということ。子供を産んだことのない私でも知っていることを簡単に伝えた。
「……そんなこと、聞いたこともなかったわ」
「……えぇぇぇ」
中世っぽい世界だなぁ、と思ってたけど、その手の情報って知らされないものなんだろうか。産婆さんとかお医者さんとか、アドバイスみたいのってしてあげないのかしら。ジーナ様のお母様は若い頃にお亡くなりになっていたそうだし、アリス様は……まぁ、ポンポン産まれたっぽいから、気にしたこともなかったかもしれないか。
「とにかく、屋敷の方々全員で協力して、ジーナ様が心安らかに居られる環境を整えて、母体がいい状態にあるようにしてあげてください。大丈夫。今度はちゃんとジーナ様たちに愛らしい赤ちゃんが来てくれますって」
「ミーシャ……」
それでも、なんだか不安そう。むむむ。このままの彼女を放っておくわけにもいかないかな。本来なら、実母がいらっしゃるならしばらく実家に帰って、なんてことも出来たのだろうけれど、すでに亡くなられているわけだし、そもそも、あの妹たちがいるんじゃ帰すわけにもいかない。
もしかしてアルム様、この状況も見越して、私にここまで向かわせたのかしら。
「まだ、今すぐに王都に向かうこともないでしょ。あちらから、何かしら連絡があってからでも考えればいいでしょうし」
……そう言ってた時期もありました。
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