第29話

 目の前の冒険者ギルドの建物に、私は思わずゴクリと唾を飲み込んだ。

 初めての場所ってだけでも緊張するけど、重厚な木のドアにドキドキする。なんか、明治時代とかの銀行っぽい?

 ドアの前で、取っ手に手を伸ばそうか迷っていると、反対に勢いよくドアが開いた。


「うわっ」

「なんだ、邪魔なんだよ」


 現れたのは柄の悪そうな冒険者たち。

 なんというか定番な反応に、笑いそうになったのを俯いて隠す。口元、ヤバイ。モヨモヨしちゃう。


「ほら、子供を虐めてんじゃないわよ」

「うっせぇな」


 女の人もいたのか、と目を向けると、すごく背が高くて、ボンキュッボンの身体を惜しげもなくボンテージっぽい格好してる美女がいる。さ、寒くないのかな、とか、勝手に心配したけれど、彼女は私の方に目を向けず、前を歩いてるデカい男の尻を蹴とばしてた。よっぽど痛かったのか、男の人は、痛ぇ、痛ぇ、とお尻を撫でてた。

 冒険者ともなると、女の人も凄いんだな、と思いつつ、開け放たれたドアからスルリと建物の中に入った。


「おおお」


 奥の方にカウンターっぽいのがある。そこに窓口があるのだろう。数人が列になって待ってるみたい。

 その脇の部屋は酒場っぽい場所があるみたい。そっちから何人かが私の方を見てる視線を感じながら、列の短そうなところに並んだ。

 みんなデカいなぁ、と感心しながら周囲を見回している間に、私の番になった。


「はい。どういったご用件ですか?」


 赤毛をお団子一つに纏めたそばかすのお姉さんが、無表情に声をかけてきた。

 ちょっと怖そう。こういう場所で仕事してると、そうなっちゃうんだろうか、と思ったけど、隣に座ってる人は色っぽい感じで笑みを浮かべながら対応してる。相手は……うん、迫力あるおじさんたち。

 ……彼女だから、なのかもしれない。


「えと、ギルドの登録をお願いしたいんですが」

「では、こちらの書類に必要事項をご記入ください……読み上げた方がいいですか?」

「いえ、大丈夫です」


 差し出された書類に目を通す。じっくり読むのは、あっちでの経験上。契約関係はちゃんと読まないとね。


 内容としてはたいしたことはなかった。

 招集がかかったら、参加は必須だということとか、ギルド内でのトラブルは自己責任だとか、期間内にクエストをクリアしないと、内容によっては罰金がとられるとか。意外だったのはスキルの登録。自己申告制で登録しておくと、該当スキルのクエストがあると、優先して声をかけられるとか。調薬のスキル、登録しておくか迷うけど、道具すらないから、今はやめておこう。


 一通り目を通して、すべてに『はい』と回答する。そして最後にサイン。


「はい、これでいいですか」

「……はい。では少しお待ちください」


 お姉さんは無表情に書類を受け取ると、カウンターの奥の部屋へと入っていった。


***********


 冒険者ギルドのランク


 ランク カード 昇級方法

 SSS ↑

 SS  ↑

 S  プラチナ ギルドマスター3名以上の推薦が必要

 A  ゴールド ↑ 

 B  シルバー ↑

 C  ブロンズ 昇級試験

 D   ↑    ↑

 E   ↑    ↑

 F   ↑    クエストの実績のみ

 G  アイアン 


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