第83話

 オークの集落の後始末はギルドに任せると、精算だけしてさっさと町を出た私たち。最後まで引き留めようとしてたのは、ちょっと使えなかったギルマス。エドワルド様に昔世話になったっていうから、本人に覚えているか聞いたら、全然覚えてなかった。その点は、少しだけ可哀相だったかもしれない。

 本来なら、もっと急いでリンドベル領に向かいたいところ。ワイバーンだったら、すぐに到着しそうだと思ったんだけど、実は法律的に国境を越えられないらしく(緊急事態のみ)、私たちは馬でレヴィエスタ王国に向かうことになった。その上、私のことを気遣ってか、だいぶスローペースで進んでいる。

 召喚された王城から一人で逃げ出した最初の頃のことを考えると、今は一緒にいてくれる人たちの、なんと多いことか。こうして守って下さってることの、ありがたいことこの上ない。

 ただ難点を言うのであれば。


「ミーシャ、今度はじいじと一緒に馬に乗ろう」

「いえいえ、父上、今度こそ、私です」

「パメラ、何を言ってるの? ミーシャ、おばあちゃんのところにね」

「父上も母上も……ミーシャが困ってるでしょうに」


 ……休憩が終わると、誰の馬に乗るかで、家族の中で争奪戦が繰り広げられるわけです。ニコラス様だけが、常識人らしいことを言ってますけど、誰も相手にしてないし。そのたびに、私の中の何かがゴリゴリと削られていく気がします……。

 エドワルド様もアリス様も、私とほぼ同世代(全然見えない。若作りすぎるっ!)で、『じいじ』とか『おばあちゃん』とか言わないで。まぁ、確かに、私が転生してたら『じいじ』や『おばあちゃん』だったんだろうけどさぁ……なんかショックだわ。


「ほら、ミーシャ、おいで」


 そう言って私を軽々と抱え上げるのは、安定のイザーク様。


「イザーク!」

「もうっ!」

「兄上ばっかり!」

「……」


 私は虚ろな笑いを浮かべながら、諦め半分で抱えられていく。まぁ、慣れてるし、イザーク様なら、最終的に誰も文句を言わないという。

 エドワルド様はわからないけど、女性陣は色々と話しかけてくるのは想像できるから、余計なおしゃべりもしないイザーク様は気楽と言えば、気楽なのだ。

 次こそは、と鼻息荒く馬に乗る面々。そんなに一緒に乗りたいものなんだろうか。

 町を出る前の夜に、双子にもちゃんと説明しているんだが。中身は四十七歳のおばさんだって。エドワルド様もアリス様も、わかってるはずなのになぁ。


「あは、あははは……」


 愛玩動物ペット扱いに慣れていない私なのであった。

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